研究課題/領域番号 |
15K04190
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
大久保 街亜 専修大学, 人間科学部, 教授 (40433859)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2020-03-31
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キーワード | 信頼感 / 顔認知 / 表情認知 / 社会的認知 / 裏切者検出 |
研究実績の概要 |
平成30年度は、これまで行ってきた研究のいくつかを国際的な論文誌に掲載することができた。まず、"The big warm smile of cheaters: Lateral posing biases and emotional expressions in displaying facial trustworthiness"と題した論文がLaterality: Asymmetries of Body, Brain and Cognition に掲載された。この論文では、裏切りの隠蔽を可能にする表情について詳細な分析がなされ、裏切り者が陽性の表情を、感情が強く表出される顔の左側を使って表出し、裏切り意図を隠蔽していることが示された。加えて、これまでの研究で得た裏切り者と協調者の顔写真を用いた研究が論文となりNeurobiology if Aging に掲載された。この研究は"Age-related differences in the activation of the mentalizing-and reward-related brain regions during the learning of others’ true trustworthiness"という題目であった。この論文では、高齢者が第一印象による信頼性の判断を、若年者よりも正しく行えるものの、間違えを修正できず、繰り返しの判断がある場合、結果として若者よりも正しい判断ができないことが示された。さらに、その処理に対応する脳の領域の活動に年齢差があることが明らかになった。信頼性判断の更新は、特殊詐欺などの事例と強く関連している可能性があり、社会的重要性が高いトピックであると考えられる。従って、この論文の出版により、我々の成果を社会的な貢献に繋げることができたと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年度は、本研究計画の最終年度であり、これまでに行ってきた研究の取りまとめを行い、総括的な論文を執筆した。この論文の執筆を終え投稿はしたものの、残念ながら採択には至っていない。従って、今後もこの研究を続け、論文の採択に向け、論文の修正を行う必要がある。論文の掲載は、編集者、査読者、著者のやりとりの結果、編集者が決定するものなので、申請者の努力のみでは解決ができない。しかしながら、現在は第1回の査読を終え、修正を行っている段階なので時間をかければ必ず採択に至るであろう。 若干の遅れがあるものの、概要にも記した通り、平成30年度には2編の論文を国際的な論文誌に掲載することができており、研究成果は期待以上のものがあがっている。期待以上の成果が出ているために、その取りまとめに時間がかかっているのが実情である。加えて、この研究計画が、本来の計画より、半年以上遅れて開始されたことが若干の遅れが生じている最大の原因である。開始時の遅れを取り戻すのは、3年半の時間をかけてもなかなかに困難であった。それでも、これまでの研究期間において6編の論文を査読のある国際的な論文誌に掲載することができた。これは単独の申請者として行っている研究であることを考えると十分すぎる成果である。すなわち、このような成果は本研究計画が開始の遅れにもかかわらず、順調に進行し、申請者の予想以上の成果を上げてきたことを示している。
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今後の研究の推進方策 |
上述の通り、現在はこれまでの研究成果の取りまとめを行い、総括的な論文を作成している段階である。その論文はすでに審査を受けており、現在は査読結果を受けて論文の修正を行っている。査読者からの要求は、決して困難なものではないので、時間をかければ適切な改稿ができると我々は考えている。 ただし、追加の実験が必要になる可能性があり、そのために共同研究を行ってきたノルウェーのオスロ大学やオーストラリアのフリンダース大学で、新たなデータを取る必要が出てくるかもしれない。追加実験は、論文の審査の過程で要求されるので、不明瞭な部分がある。申請者としては、十分な証拠があると判断し、論文を作成した。従って、現時点では、この研究計画のために追加のデータを取得する必要はないと考えている。しかしながら、これも編集者、査読者の要求次第であるため、これから先に変更が生ずる可能性がある。また、追加データを取る必要がなくとも、データの再分析や、論文の執筆について綿密な打ち合わせが必要になることは十分に予測される。これまで共同研究者とは緊密な関係を気づいていきたため、追加データの取得や再分析、論文執筆のための打ち合わせを行うことに支障はないものの、実際それらを行うためのスケジューリングなどは改めて行う必要があり、時間がそれなりに必要になると考えられる。もっともすでに論文審査の第1段階を終えていることを考えると、平成31年度の早い段階でこれらを終え、論文の採択に至るであろうことが予測される。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究計画は、研究採択が初年度の秋であり、研究開始が当初の予定より半年ほど遅れた。研究成果は毎年着実にあげ、計画に記載された以上の達成を質的には示しているものの、その最初の予定を時間的な面で最後まで克服することが難しかった。その為もあり、最終的な総まとめとなる論文が当初の予定通りには完成をしなかった。しかし、繰り返し述べている通り、この総まとめとなる総括的な論文はすでに審査の第1段階を終えている為、近々、採択の運びとなるであろう。 加えて、本研究では、現時点で6編の査読付き論文を公刊しており、成果は期待以上にあがっている。この期待以上の成果の取りまとめに、想定以上の時間がかかっていることも、研究が予定通りに終結しなかった理由の一つである。予定通りに進まなかったことは、必ずしも望ましくはない。しかしながら、期待以上の成果が上がっている為であるなら、少なからずポジティブな面もあるのではないだろうか。
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