研究課題
本研究は、重度認知症患者の潜在的な意図性や主観性の把握を目指したものである。そのために、質問紙調査と実験的手法による検討を行った。質問紙調査では、認知症患者の介護者に対して発症前後の行動の評価を行わせ、その差分を行動変化として指標化した。今年度は失語症状を特徴とする認知症である緩徐進行性失語症(primary progressive aphasia: PPA)の3つのタイプ(意味性認知症型PPA: svPPA、非流暢/失文法型PPA:nfvPPA、ロゴペニック型PPA:lvPPA)の患者を対象に分析とその報告を行った。質問紙は、感覚・認知・社会性の3つの因子と「細部に敏感」「感覚の過敏性」「言語関連活動」「視空間活動」「音楽活動」「社会的態度」から構成されているが、失語症型ごとに分析すると、いずれの型においても発症後に「感覚の過敏性」が高まることが明らかとなった。また、svPPAの患者は認知症発症後に初期に限定されているが、発症前よりも「視空間活動」が高まることが明らかとなった。また「視空間活動」と「音楽活動」の項目で比較すると、lvPPAとnfvPPAは対比的な関係にあることが明らかとなった。実験的手法では、寝たきりで全介助の最重度患者を対象に、アイトラッカーでの計測を試みた。その結果、キャリブレーションが可能であった3名では人物に対する注視が確認され、複数人物の提示ではその選好も確認されたことから、自発性が著しく損なわれた重度の認知症患者であっても、視線による認知機能の計測が可能であることが確認された。
2: おおむね順調に進展している
家族介護者を対象にした質問紙による調査から予想以上の知見を得ることができた。またアイトラッカーを用いた実験からは、手法の有効性を確認することができ、今後の展開の基盤となることができたため。
質問紙調査からは、認知症患者のポジティブな機能変化についての研究の端緒となった。今後は縦断的な研究を推進する予定である。アイトラッカーによる実験心理学的検討からは、意志決定支援のための手法を確立する予定である。
重度認知症患者のアイトラッカーによる視線計測の目処が立ったが、一部の患者では眼瞼の状態からキャリブレーションを行うことができなかった。そのため、より頑健かつ簡易な手法により視線計測の可能性を確認する必要が生じたため、期間を延長することとした。
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