研究課題/領域番号 |
15K04192
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研究機関 | 実践女子大学 |
研究代表者 |
作田 由衣子 実践女子大学, 生活科学部, 講師 (30454078)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 社会的認知 / 発達 / 信頼感 / 顔 |
研究実績の概要 |
本研究課題は印象知覚メカニズムが乳幼児期の発達過程でいつどのように獲得されるかを視覚認知の視点から明らかにすることを目的とする。これまでの検討により、乳児でも信頼感印象に対する感受性を持っており、乳児も成人同様、顔の全体情報から印象を知覚していることが示唆された。以上の結果はまだよく解明されていない発達初期の印象知覚に関して重要な知見を提供するものである。これまでに得られた結果をもとに論文を執筆し、現在国際誌に投稿・査読中である。 乳児を対象とした調査では、顔の信頼感印象に焦点を絞って検討したが、信頼感以外の印象の知覚についても明らかにするため、信頼感(trustworthiness)、力強さ(dominance)、有能さ(competence)のいずれかの印象をコンピュータグラフィクスにより操作した顔画像を使用し、それぞれの印象の違いを見分けることができるかを検討した。対象は2歳~6歳とした。印象の種類によっては、早い段階で知覚できるものと、より後期に発達するものがあると予測される。この実験については昨年度の予備的検討の結果を元に刺激画像のセットを修正し、再度実験を行っており、現在データの取得途中である。分析の結果、2歳児でも、信頼感の高い顔をほぼ一貫して「いい人」と認識するが、そのほかの印象についてはより年齢が進むまで判断が安定しないという傾向が確認されている。今の時点では年齢により人数にばらつきがあるため、引き続きデータ収集を継続する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで収集した乳児を対象としたデータに基づき、学術論文を執筆、投稿することができた。 また、これまでに確認された乳児の信頼感への感受性を、幼児でも確認することができた。乳児期から幼児期へと移行する2歳~3歳の幼児の判断について、新たな知見を得ることができた。幼児を対象とした研究成果については、2018年度に国内および海外の学会で発表予定である。 印象知覚に関する研究を数多く行っているPrinceton大学教授を招聘して講演会を開催した際に、本研究課題についても時間をかけて議論を行うことができた。 以上の点で順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き幼児を対象とした印象知覚研究を行い、これまでに得られたデータを総合して分析を行う。研究成果を体系的に整理し、国内外の学会での研究発表および国際学術雑誌への掲載に向けて準備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
夏にPrinceton大学より印象知覚の研究者を招聘して講演会を開催し、その前後で本研究課題についても議論を行った。そのため、海外旅費を使用しなかった。また、当初見込んでいたよりも調査への参加を承諾してくださった方が少なかったため、調査補助のアルバイトの謝金が想定していたよりも抑えられた。また、論文の掲載に至らなかったため、論文掲載のための費用がかからなかった。 今年度は、さらに引き続き調査を実施する。調査の実施とデータ整理のためアルバイトを雇用する。年度内に国内外の学会での研究発表を行い、論文の掲載を目指すため、旅費、学会参加費、英文校閲料及び掲載料が必要となる。
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