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2015 年度 実施状況報告書

感じの良い顔は注意を引くのか?:事象関連電位を用いた研究

研究課題

研究課題/領域番号 15K04196
研究機関中京大学

研究代表者

池田 功毅  中京大学, 心理学研究科, 研究員 (20709240)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード顔表情 / 注意 / 事象関連電位
研究実績の概要

2015年度は、研究員が以前行った恐怖表情に対する自動的な注意捕捉効果に関する研究(Ikeda, Sugiura, & Hasegawa, 2013)をもとに、ほぼ同一のパラダイムを用いて、同様の効果が笑顔と怒り顔についても生じるかを検討した。参加者には単純な視覚探索課題が課され、課題関連刺激と同時に、左右視野のいずれかに表情顔が、他方に中立表情顔が呈示された。予測としては、課題とは無関係に提示された顔表情が注意を捕捉し、N2pcと呼ばれる脳波成分が観測されると考えられた。第一実験では恐怖顔と中立顔のペアを用いて先行研究の追試を行い、第二実験では、笑顔と中立顔、怒り顔と中立顔のペアを用いて検討を行った。また両実験で、ペアの顔両方が同一人物の場合と、異なる人物の場合の2条件間でも比較を行った。
結果、予測通りN2pcに類似したERP成分を観測することに成功したが、必ずしも頑健と言えるデータではなかった。先行研究と同様に、表情顔に対するN2pcは極めて微細であったが、先行研究とほぼ同様のデザインで測定されたにも関わらず、今回の測定結果は比較的不安定なものであった。このことは、表情顔に対して生じるN2pcが、必ずしも先行研究で報告されたような安定したものではない可能性を強く示唆している。技術的に最も大きな問題と考えられたのは、確かにN2pcが予測される時間帯(刺激提示後170-270 ms)に陰性方向への電位差が確認されるものの、それが本当にシグナルとして、ベースライン区間(刺激提示前100 ms)において観測されている自発的なノイズから区別されるかどうかという点である。今後はpermutation法(Sawaki, Geng, & Luck, 2012)などを用いて、統計的手法にシグナルを分離するか、あるいはより効果量を大きくする実験デザインを検討する必要があると思われる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

研究代表者自身の先行研究で頑健に観察されていた効果を、完全に再現することができなかったために、研究計画がやや遅れている。おそらく最も大きな原因は、以前の研究では脳波測定に慣れた大学院生などの参加者を多くリクルートしたため、筋電位由来のノイズが少なかったのに対して、今回の研究では、よりナイーヴな参加者からデータ取得をすることを重視し、一般大学生からランダムに参加者を募集したため、緊張から来る金電位由来のノイズを除去しきれなかったためと思われる。S/N比を高めるため、先行研究と比べて二倍の参加者数を確保したが(N=40)、効果はあまり無かった。

今後の研究の推進方策

今後はその原因の特定と実験デザイン等の改善を行う必要があり、特に効果自体をより大きく検出できる実験デザインの検討が必要と思われる。既に Kappenman et al. (2015) Front. Psychol. を参考とした次の実験デザインを策定しており、まずこれを用いて、再度の追試を行う。同時に、信頼できる統計的手法によって、シグナル(N2pc)をノイズから切り分けるため、Permutation 法や状態空間モデルなどの適用を検討する。

次年度使用額が生じた理由

当該効果の測定が、当初の予想よりも難航したため、予定分の研究費を次年度に回し、さらに研究計画を練り直して、今後の研究遂行に関わる基礎をより強固なものとするため。

次年度使用額の使用計画

既に策定済みである、新たなパラダイムを用いた先行研究の追試に関わる参加者への謝礼に使用する。

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公開日: 2017-01-06  

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