研究課題/領域番号 |
15K04197
|
研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
村上 隆 中京大学, 現代社会学部, 教授 (70093078)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 質的データ / Likert尺度 / 数量化理論 / 多重対応分析 / 主成分分析 / 直交多項式 / 直交回転による斜交回転 |
研究実績の概要 |
まず,今年度の成果としては,質的データの数量化法としてきわめて一般的な多重対応分析(multiple correspondence analysis; MCA)の解について,回転を含む主成分分析(principal component analysis; PCA)と同様の扱いが可能になるような新たな方法である正規直交多項式主成分分析(orthogonal polynomial principal component analysis; OPPCA)を開発したことである。これについては,「データ分析の理論と応用」誌に査読付き論文として掲載された。 この方法の実データへの適用テストにおいて,本課題の主テーマである完全単純構造主成分分析を適用し,特に,bootstrap法を用いた解の安定性のテストに適用して,一定の成果を得た。 この際,とくにこの方法が一般の社会調査データよりも,心理学において広く用いられているLikert尺度の分析に威力を発揮すること,通常,著しく違った結果を生み出すと見られるMCAとPCA(広義の因子分析)の解が,多くの場合,包含関係にある(MCAの解にPCAの解が含まれる)ことがわかった。その他,MCA の解について,いくつかの興味ある性質を見出すこともできた。 これは,計画調書においては2016年度に実施を予定していた計画であったが,諸般の事情で前倒しで実行し,所期の成果(むしろ,予期しなかった結果)を得たものである。 今年度に関しては,OPPCAの開発に主たるエフォートを投入したため,メインのトピックについては,上記のような補助的手段としての適用例を蓄積するにとどまったが,2015年度春までの成果については,国際計量心理学会(2015念7月,北京)において発表し,一定の反響があった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記のように,今年度は本方法の適用に関して,次年度に予定していた質的データへの適用と,そのための基礎研究を優先したため,研究遂行の順序がやや前後している。しかしながら,その点では,予定以上の進展を見たとも言えるので,研究全体としては,(2)と評価した。最終年度までには,計画全体を申請時の目標を達成することができると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
OPPCAの開発は予想以上の成果であったが,論文の刊行で一段落したため,今年度は,初年度に計画しながら,遅れている多くのデータへの適用と,シミュレーション研究に主力を注ぎたい。こちらも,査読付き論文として刊行にこぎつけることが目標である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究内容が,理論研究に傾斜することとなったため,データ整理等の人件費を使用する機会がなかったことと,海外出張先が北京となったため,旅費の支出が大幅に減じたこと,また,次年度における海外旅費が高額になることが予想されたためである。
|
次年度使用額の使用計画 |
2018年7月開催の国司計量心理学会大会(アメリカ合衆国,ノースカロライナ州アッシュビル)への出張旅費として大半が支出される。
|