研究課題/領域番号 |
15K04198
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研究機関 | 愛知淑徳大学 |
研究代表者 |
吉崎 一人 愛知淑徳大学, 心理学部, 教授 (80220614)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 視覚的注意 / 適合性効果 / 比率一致性効果 / ラテラリティ / 接近ー回避動機づけ |
研究実績の概要 |
重要な情報を優先的に処理する視覚的注意は状況に応じて変動する。これを示す現象の一つが比率一致性効果である。この効果は,ストループ課題,フランカー課題,サイモン課題に代表される刺激反応適合性課題から観察される適合性効果の変動をさす。具体的には実験ブロック内の一致試行が多くなるにつれ,適合性効果は大きくなる。 本研究の目的の一つは,比率一致性効果の半球優位性(ラテラリティ)を検討することである。昨年度の検討では比率一致性効果のラテラリティを見いだせなかった。そこで,左右半球を選択的に活性化させた事態が比率一致性効果に及ぼす影響について検討した。 接近-回避動機づけとラテラリティの関連性が指摘されていることから,腕の屈曲動作(接近動機づけ/左半球),伸展動作(回避動機づけ/右半球)を課題の反応動作として取り入れた。その結果,屈曲動作(反応)時に比率一致性効果は大きくなり,左半球の活性化が視覚的注意の柔軟性を高める可能性を明らかにした。 さらにこの動作事態でのラテラリティを確認する必要があるため,二つの実験をスタートし継続中である。一つは,ラテラリティを推測するために線分二等分課題を実施する際に,課題の反応動作に腕の屈曲伸展を採用した。通常の線分二等分課題では,主観的等価点は,実際の中心よりもわずかに左側にそれることが知られている。実験のこのことは確認できた。しかしながら腕の動作による主観的等価点のずれは生じなかった。もう一つのアプローチは,自発脳波のアルファブロッキングをラテラリティの指標として使い,腕の動作がアルファブロッキングに及ぼす影響をみている。 本研究の目的の二つめは,比率一致性効果の生起機構の解明である。特に,想像上の他者と一つのフランカー課題を共有して実施する際に,他者の比率一致性が観察者の適合性効果に影響することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
腕の動作(屈曲伸展)とラテラリティの関連性について,これまで主張されている知見を再現できないことが大きな理由となっている。そのため,平成28年度に自発脳波を新たにとりいれた。その機器の準備等に多くの時間を費やした。
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今後の研究の推進方策 |
腕の屈曲伸展動作とラテラリティの関連性を確認する必要がある。そこで,自発脳波のアルファブロッキングから,腕の屈曲伸展動作がラテラリティに及ぼす影響を検討する。ラテラリティを顕著にする事態をみいだし,その事態で,注意の柔軟性(比率一致性効果)を測定する。これまで得た研究代表者の知見が正しければ,屈曲動作時(左半球活性化時)に比率一致性効果が大きくなることが予想される。 比率一致性効果の生起機構については,2つのアプローチを行う。一つは,随伴性学習の視点である。一致試行の多寡は,課題関連情報への注意のウエイトを変えているわけではなく,刺激と反応,あるいは刺激と反応動作(手によるボタン押し)自体による可能性も主張されている。特に後者の見解について検討する。 もう一つのアプローチは,「課題関連性仮説」についての検討である。この仮説は,比率一致性効果の生起には,実施者の課題に関連する情報の一致/不一致の比率が重要であるというものである。そこで,他者との共同作業自体を設定し,他者の課題と観察者自身の課題関連性を操作し,観察者の比率一致性効果を観察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2度目の国際学会が年度末であったため,旅費等を次年度に執行せざるを得なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度末のものを含め,国際学会での資料収集などを2度予定している(40万円)。またその際に資料収集し,研究のまとめに役立てるための雇用も予定している(30万円)。 成果を国際誌に投稿するための英文校閲には20万程度を予定している。
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