研究課題
平成28年度は、人工甘味料であるサッカリンを入れたヨーグルトを摂取したラットと、甘味料を入れないプレーンヨーグルトを摂取したラットで、ホームケージでの餌の摂取量と体重の変化を比較し、さらにオペラント箱での砂糖ペレットを強化子とした場合のレバー押し行動を比較した。まず砂糖ペレットを強化子としてレバー押し行動を5日間訓練した。その際、光と音の複合刺激(cue)を砂糖ペレットと同時に呈示した。その翌日にはCueテストを実施した。Cueテストではレバー押しに対してCueのみを随伴させた。その後、ラットを2群(サッカリン群とプレーン群)を分け、3週間、ホームケージでヨーグルトを与えた。ラットには1週間に6日間ヨーグルトを与えた。サッカリン群では、1週間のうち3日間はサッカリン入りヨーグルトを、3日間はプレーンヨーグルトを与えた。プレーン群では6日間ともプレーンヨーグルトを与えた。その後、1日のCueテストを実施し、その翌日には1日の摂取テストを実施した。この2つのテストはオペラント箱で実施し、Cueテストではレバー押しに対してCueのみを随伴させ、摂取テストでは砂糖ペレットとCueを随伴させた。主な結果は以下の通りである。第1に、3週間のヨーグルト呈示期間中に、サッカリン群のラットはより体重が増加した。また、その間の飼育用飼料の摂取量は、サッカリン群の方が多かった。第2に、Cueテストでは、ヨーグルト摂取期間の前よりも後の方が、反応数が増加した。これは、砂糖渇望の孵化(incubation)が生じたことを示す。ただし、サッカリン群とプレーン群に有意な差は無かった。最後に、摂取テストでの反応数はサッカリン群の方が多かった。このことは、サッカリン摂取により、甘味により満腹感が生じるメカニズムの阻害が起こっているという仮説に一致する。
2: おおむね順調に進展している
人工甘味料入りのヨーグルト摂取により、飼育用飼料の摂取と体重の増加が促進されるという先行研究の再現に成功した。前年度の研究では体重増加の促進は確認されたが、飼料摂取の促進が確認されなかった。飼育用飼料の変更により、再現に成功したことは、飼育用飼料の種類が重要であることを示す。それに加えて、砂糖ペレットを強化子とするレバー押し行動の分析においても、人工甘味料入りのヨーグルト摂取により、反応数の増加と砂糖摂取の増加が確認された。この結果は、人工甘味料摂取により、甘味が飽和作用をもたらすメカニズムが阻害されるとの仮説に一致している。
平成28年度は、Purdue UniversityのSwithers教授とWestern Washington UniversityのGrimm教授と人工甘味料に関するシンポジウムを開催し、情報の交換を行った。シンポジウム及びその前後でのディスカッションで実験の詳細についての確認をしたことをふまえて、今後の研究を実施する。
海外から2名の研究者を招聘し、研究の打合せと公開シンポジウムおよび公開講演会を予定していた。これらはいずれも実現されたが、1名の招聘には別予算を充てることができたため、予算執行に余裕が生じた。
前年度の招へい研究者との打合せにより研究の技術上の問題が解決されたため、研究を速やかに実施する。
すべて 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
Appetite
巻: 105 ページ: 8-13
10.1016/j.appet.2016.05.008
https://psych.doshisha.ac.jp/staff/aoyama/studyc.html