ヒトを含む霊長類は社会的動物であるといわれるが、社会環境への適応学習はこれまで主に皮質内における神経活動を基に論じられてきた。そこで本研究では、他者の報酬情報が自己の報酬価値にどのように影響を与え期待行動に反映されるかについて、皮質下、特に視床下部外側野に着目し、その神経応答を調べた。生理学的・薬理学的実験を行った結果、この脳部位が他者の報酬情報を含む自己の主観的報酬情報を表現し、期待行動に大きく影響を及ぼすことが明らかとなった。これらの結果は、既存の学習理論を自己の報酬情報だけではなく他者の報酬情報をも加味したものへと拡張することを可能にし、我々の社会行動を考える上で重要な示唆を与える。
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