計画の3年目にあたる2017年度は、A高校での観察が終了し、研究のまとめとして、学会発表と、論文の投稿を行った。2018年10月の日本教育方法学会第53回大会(千葉大学)において「地域高校における困難を抱える生徒への発達支援の試み-全員が卒業できるまで―」という題目で池田考司氏(研究協力者:当時高校教諭)と共同で学会発表を行った。本発表においては、地域の困難校A校の様子と当該の学年の生徒が退学者を出さず全員卒業できた経緯とその背景を紹介し、特にその中の二人の生徒に焦点を当てて3年間の過程について事例研究を行った。入学前に対人関係上の傷つきを持った生徒が、学校行事での活動や授業を通した内省を通して、試行錯誤を経ながらも対人関係に自信を得て、回復していく経緯をまとめ、授業での関わりの意味や小規模の学年であったことの意味を考察した。指導困難校は、生徒一人一人がそれぞれに困難な背景を抱えているため、教員の手が廻らず、指導の大変さから生徒を退学させていくという負の循環が生じるが、A校は少人数であったことによりこの循環に至らず、生徒に安全な場や内省を行う機会を提供することが可能だったのだと思われる。2018年9月には、当学年の1年生の現代社会での授業実践と生徒の事例研究を中心に論文をまとめ、論文投稿を行った。論文が残念ながら2017年度は採択されなかったため、ビデオのデータの再分析などを行い、2018年度に再投稿を行う予定である。
|