本研究は、高校の指導困難校での教科学習の授業を通した生徒の発達支援の可能性を検討する事例研究である。過疎地域のA高校は入学者が10数名となり、生徒もさまざまな困難を抱えていた。B教諭は1年生の現代社会の授業において、生徒の抱える課題に授業の題材を近づけ、教科通信での感想の共有を通して、生徒の自己表現と仲間づくりを支える試みを行った。生徒は自身の過去、将来の夢などを文章で表現することを通して友人関係を形成した。その友人関係は生徒が3年間をかけて対人不安を克服し自尊感情を回復する支えとなった。最終的に当該学年の生徒は退学者なく卒業した。2年生、3年生時は学校行事や相談室の果たした役割も大きかった。
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