小中学校における特設「道徳」の教科化が開始されたとき、教科教育としての道徳教育の理論構築は大きく立ち後れたまま、「考え、議論する道徳」という枠組みだけが提示された。本研究は、道徳・倫理の複数性や多元性を踏まえながら、道徳をめぐって何について「考え、議論する」必要があるのか、多様な角度から解明を試みた。この道徳教育論およびそれと統一的な理念に従う学習論は、人工知能が高度化し、正解のない問題が頻出する未来社会において人間に求められる能力や、そのような人間を育てる教育のあり方について重要な示唆を与えてくれる。
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