全国の学校において急激に進行している多様な価値観の内在化―言語文化的多様性―の状況を積極的に活かした「協働的な学び合いの場」を創出することを目標に、当該場面への参画・調査・還元を通して潜在する実践知を解析・発掘し、対話的活動による学習環境良質化の理論の妥当性、対話的手法の実効性、言語の教育的貢献機能と対話行為との関係性を検証する。この検証過程を経て、現場自らの主体的かつ容易な実践化を可能とするカリキュラムモデルを構築し、様々な教育活動に適用できる学習環境づくりの方策を提唱する。 昨今、子どもたちが集う教室等における言語の重要性は、学校種を問わず各地の教育現場で再認識され始めている。それは、論理的思考力・表現力・判断力といった個別的な力、調整力・コミュニケーション力といった対話的な力に加え、人格の発達や自律心・思いやり・責任感などの人間性の育成、さらには、他者・社会・自然環境との関係性を鑑みた「多様性」や「つながり」を尊重できる人材の育成に言語が深く関与していることが、実証的あるいは理論的研究によって支持されてきたためえある。このことは近年の政策提言にも反映されている。 以上を踏まえた本研究では、近年の多言語化・多文化化する教育現場に潜在している知見を発掘し、それらを肯定的に活かす力を実践者の高度な専門性として評価する。そのための鍵概念が、「対話」である。対話の機能が言語の力の根底をなすという側面が明らかにされれば、教育における言語の重要性の裏付けとなるだけでなく、個々人の言語力の向上ひいては言語が交錯する学習環境そのものの良質化を導く契機になる。
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