本研究は、戦後改革期における公立大学の成立過程について、「理念」、「制度」、「実態」の三側面から、一次資料を収集・分析することで実証的に解明することを課題としてきた。 最終年度である本年度は、神奈川歯科大学資料館、東洋学園大学学園史料室、福岡県議会図書館、福岡県立図書館での資料調査を実施し、そこで収集した資料に加えて、国立国会図書館憲政資料室所蔵の連合国軍最高司令官(GHQ/SCAP)の公衆衛生福祉局(PHW)、民間情報教育局(CIE)の関係文書、シカゴ大学所蔵のデービッド・H・スティーブンス文書、国立教育政策研究所教育図書室所蔵辻田力旧蔵資料、国立公文書館所蔵の大学設置認可関係資料、山梨県庁所蔵山梨県立医科大学関係資料などについて分析を進めた。その結果については、教育史学会で発表し、学術論文としてまとめ投稿中である。 研究期間全体をつうじて、①「理念」をめぐっては、戦後改革期を含む戦後の全体にわたる公立大学の新設動向と政策動向を押さえることで政策側のモメントとそれに影響を与えたとみられる理念の一端を示した。また「米国対日教育使節団報告書(第一次」の高等教育にかかわる部分の草稿について検討することで新たな知見を得た。②「制度」にかかわっては、B級医学専門学校・歯科医学専門学校から特設高校の設置を経て公立大学へと志向・展開する「中継ぎ」の仕組みを成り立たせた文部省の制度改革とその意図、医学視学委員の組織と役割を明らかにした。③「実態」については、福島県立医科大学関係資料の発掘、山梨県立医科大学の昇格運動の実態と展開過程の検討を行なった。これらの成果のうち主要部分と未刊行資料をまとめて研究成果報告書として発表した。
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