最終年度である平成30年度、学習アーキテクチャの可能性とその課題について、大きく二つのことを遂行した。一つ目は、国内における研究発展である。平成28年1月に刊行した論集『災害と厄災の記憶を伝える』(勁草書房)を土台として、平成29年8月4日に開催された島根大学教職大学院・夏期/地域教育課題支援事業「災害×まち×教育--学校の役割を考える」において講演を行い、平成28年秋に鳥取県中部地震によって被災した地域の教育課題について災害の記憶問題との関連において現地の関係者とともに検討した。また、平成29年10月15日には、教育哲学会第60回大会ラウンドテーブル「教育哲学は〈災害と厄災の記憶〉にいかに向き合うのか」を小野文生氏とともに企画・運営し、基調報告を行うと同時に、『災害と厄災の記憶』論集の共同執筆者ならびに新たにこのテーマに関心を寄せる論者2名の報告を催し、この方向での研究のさらなる発展可能性について議論した。平成30年度のもう一つの達成は、ドイツ語圏における教育学界への研究成果の発信である。平成28年度のドイツ教育学会年次大会における研究報告の内容を基盤とした論文をドイツ教育史学会の機関誌に投稿し、掲載を果たした。ドイツの文化科学領域におけるメモリー・スタディーズを牽引するAstrid Erll氏、またこの種の問題に関心を寄せるHeinz-Elmar Tenorth氏、Ulrke Mietzner氏など複数の教育学者たちと情報交換を行い、上述した国内外に発信した研究成果をさらに発展させたメモリー・ペダゴジーを構想するための研究上の共同体制を確立することができた。
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