研究課題/領域番号 |
15K04235
|
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
梶原 郁郎 愛媛大学, 教育学部, 准教授 (30390016)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | デューイ / 教育課程 / 科学の知識 / 転移 / 民主主義 |
研究実績の概要 |
本研究の課題は、以下三つの視点からJ.デューイの教育課程論を分析して、デューイの教育課程論と民主主義社会論との認識論的関係を明らかにすることである。(Ⅰ)恒常的に変化する産業技術に再適応しつつ同技術を改良できる科学的知性形成、(Ⅱ)自己を外側から見る他者の視点の形成、(Ⅲ)自己の生活を支えている生産関係(国内外の人々の連なり)の認識形成、これらをデューイの教育課程論はどのように保障しているのか。産業技術の公共的改善を土台とするデューイの民主主義社会論は(Ⅰ)の科学的知性に加えて、同知性の行使の妥当性を検証する(Ⅱ)の他者の視点形成、および(Ⅲ)の社会認識形成を要件とする。以上の分析を通して本研究は、デューイの両論の関係が学習者の認識形成過程に即して解明されていない現状を打開する。 本研究1年目(2015年度)における(Ⅰ)に関する成果は次の通りである。(1)「J. デューイの転移概念の『民主主義と教育』における構造的位置」(日本デューイ学会第59回大会(2015年10月3日)、(2)「教科内容学としての教育課程研究-J.デューイの教育理論に基づく教育過程の内容構想-」(『日本教科内容学会誌』第2号、2016年3月、13-25頁)、(3)「総合学習と教科学習との内的関係に関する調査研究-J.デューイの「総合学習」論に基づく現状と課題-」東北教育学会第73回大会(2016年3月5日)。またデューイの教育課程論と民主主義社会論との内的関係に関する論議は、非民主主義社会を支える知性と態度に関する論議と併せて進められている。後者の検討を含む論文として、「学習指導要領(2008)の新自由主義的性格-知性の形態と態度の形態との内的関係-」(2016年3月『東北教育学会研究紀要』第19号、1-14頁)を纏めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の課題は、以下三つの視点からJ.デューイの教育課程論を分析して、デューイの教育課程論と民主主義社会論との認識論的関係を明らかにすることである。(Ⅰ)恒常的に変化する産業技術に再適応しつつ同技術を改良できる科学的知性形成、(Ⅱ)自己を外側から見る他者の視点の形成、(Ⅲ)自己の生活を支えている生産関係(国内外の人々の連なり)の認識形成、これらをデューイの教育課程論はどのように保障しているのか。 この観点(Ⅰ)による研究を本研究一年目(2015年度)は達成できた。科学の知識を転移できる科学的知性形成が、デューイの『民主主義と教育』の中でどのように構造的に位置づけられているのか、この点を明らかにできた。さらにはデューイの純粋科学はいかなる内容と方法で保障可能となるのか、この検討も行い、デューイの科学教育研究に内容と方法を与えることができた。これらの研究成果に続けて、観点(Ⅱ)(Ⅲ)から本研究課題を本研究二年目は進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の課題は、以下三つの視点からJ.デューイの教育課程論を分析して、デューイの教育課程論と民主主義社会論との認識論的関係を明らかにすることである。(Ⅰ)恒常的に変化する産業技術に再適応しつつ同技術を改良できる科学的知性形成、(Ⅱ)自己を外側から見る他者の視点の形成、(Ⅲ)自己の生活を支えている生産関係(国内外の人々の連なり)の認識形成、これらをデューイの教育課程論はどのように保障しているのか。 この課題の検討を、(Ⅰ)に関する本年度の成果に続けてさらに次のように進めていく。(Ⅱ)この観点からデューイの教育課程論を分析して、自己を外側から見る他者の視点の形成は、デューイの教育課程論では遊び・仕事・科学を通してどのように連続的に形成されるように保障されているのかを、ローゼンサル(1993)の研究を踏まえて明らかにする。(Ⅲ)この観点からデューイの民主主義社会論・教育課程論双方を分析して、次の点を明らかにする。自己の生活を支えている生産関係(産業革命を通して国内外に広がる人々の連なり)の認識形成を、デューイは児童生徒にどのように保障しようとしているのか。この点を、(タナー1991、1997)の研究を踏まえて明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
物品費・その他(消耗品費等)の費用において29229円程度、予定使用金額との差が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
29229円の残額については、2016年度(平成28年度)の直接経費として使用して、本研究の遂行を進める。
|