本研究の課題は、以下三つの視点からJ.デューイの教育課程論を分析して、デューイの教育課程論と民主主義社会論との認識論的関係を明らかにすることである。(Ⅰ)恒常的に変化する産業技術に再適応しつつ同技術を改良できる科学的知性形成、(Ⅱ)自己を外側から見る他者の視点の形成、(Ⅲ)自己の生活を支えている生産関係(国内外の人々の連なり)の認識形成、これらをデューイの教育課程論はどのように保障しているのか。産業技術の公共的改善を土台とするデューイの民主主義社会論は(Ⅰ)の科学的知性に加えて、同知性の行使の妥当性を検証する(Ⅱ)の他者の視点形成、および(Ⅲ)の社会認識形成を要件とする。以上の分析を通して本研究は、デューイの両論の関係が学習者の認識形成過程に即して解明されていない現状を打開する。 本研究3年目(2017年度)における成果は次の通りである。(1)「J.デューイの地理学習の『民主主義と教育』における構造的位置」(東北教育哲学教育史学会『教育思想』第44号、2017年5月、21-36頁)、(2)「J.デューイの経験主義教育における教師の専門的役割-同役割の民主主義社会論における位置-」(東北教育哲学教育史学会大会第50回(9月2日(土)東北大学)、(3)「J.デューイにおける教育課程編成論と認識形成論」75回大会東北教育学会発表資料(2018年3月3日(土)東北大学)。(1)は(Ⅲ)の視点からデューイの教育課程の地理学習を分析したものである。(2)は、(Ⅰ)の科学的知性形成を児童生徒に保障できる教師の要件に着目して、デューイにおける科学的知性形成を問うたものである。(3)は、(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)に関わるデューイの教育課程がどのような認識形成論に支えられているのかを問うたものである。
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