研究課題/領域番号 |
15K04242
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研究機関 | 八戸工業大学 |
研究代表者 |
松浦 勉 八戸工業大学, 工学部, 教授 (30382584)
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研究分担者 |
佐藤 広美 東京家政学院大学, 現代生活学部, 教授 (20205959)
一盛 真 鳥取大学, 地域学部, 准教授 (90324996)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 戦争責任 / 植民地(支配)責任 / 沖縄 / 3・11 / 水俣事件 / 戦争体験の思想化 |
研究実績の概要 |
松浦勉は、ここ10年余の研究成果を中心に、日本のアジア諸国民に対する戦争責任研究(戦争責任論)とこの間に提起された「植民地責任」研究の動向を検討した。前者では、3つの大きな特徴をあげた。特に民衆の戦争責任について、学界が総じてその究明と追及に依然として及び腰になっていることを批判した。民衆の戦争責任や戦後責任への覚醒は、民衆自身が社会の民主化の主体として自己変革するための基本的な条件であることを論じた。後者では、永原陽子らが提起した植民地責任論とその諸成果をとりあげ、その積極的な意義と克服すべき課題について論じた。植民地責任論は、戦争責任や戦後責任の範疇を超える積極的な視座として提起された。また、植民地(教育史)研究とのかかわりで、安川寿之輔が2000年に発表した『福沢諭吉のアジア認識』の意義を検討し、「福沢諭吉のアジア認識と植民地教育の課題」について、日本植民地教育史研究会の年次大会シンポジウムで報告した。 佐藤広美は、3つの課題を追究した。第1は、「戦後教育学」をリードした山住正己の著作集を編集・刊行し、「解説」の中で山住の〈文化に学ぶ教育〉と〈歴史に学ぶ教育〉に関する山住の教育学の特徴を究明した。第2に、現在進行形の3.11と教師・子どもの問題と水俣病の思想を追究した。第3は、教育科学研究会の研究活動方針の一環として、子どもと教師への信頼を土台として新たな教育実践を創造することの意義と必要を提案したことである。 一盛真は教育学の視点から水俣病事件を追究した。戦後教育の文脈のなかで、水俣市ないではじめてこの事件をとりあげた広瀬武の社会科教育実践を分析し、さらに被害者が語る「受苦」体験のもつ意味を教育学的に検討した。 なお、私たち3名は外部の研究者1名とともに、戦後日本教育の「通史」として、共著『歴史に学び教育の希望をひらくー戦後日本の社会と教育ー』の刊行を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
とくに、研究代表者の松浦は、戦前・戦中の海後宗臣の戦争教育学とその行動などについては究明したが、海後の戦中から戦後への思想的な移行の特徴を究明し、その「戦後教育学」そのものを批判的に検討する課題をのこしている。宮原誠一についても、同様のことが言える。上記で述べた「通史」のなかでも、この課題に関する成果を生かしていきたい。分担研究者の佐藤と一盛の場合も、このつ「通史」へのとりくみのなかで、残された課題を解決・究明するものといえよう。
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今後の研究の推進方策 |
これまで文献と史料を収集する努力をしてきたが、まだ成果として十分に生かせていない。今後は新規に文献と史料を収集しながら、批判的に検討することができていない文献や史料を読み込む作業にとりくみ、個別の成果をまとめていく。そのためにも、しっかり日程調整をして研究会合宿を定期的におこない、その場で相互に各自の成果を検討しあう必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の松浦の場合は、平成28年度に講義負担が2コマふえたこともあって、とくに研究文献と史料の収集に相応の時間を割くことができなかったことと、あわせて東京大学教育学部の図書館を使用することができなかったことなどが明けげられる。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、予算枠も大きくはないが、計画的・目的意識的に予算をつかい、とくに必要な文献と史料などを早い段階で収集したい。
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