研究課題/領域番号 |
15K04250
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
桂 直美 東洋大学, 文学部, 教授 (50225603)
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研究分担者 |
高井良 健一 東京経済大学, 経営学部, 教授 (50297339)
伊藤 安浩 大分大学, 教育学部, 教授 (90284778)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 初任期教師 / 教師教育 / ナラティブ・インクワイアリー / 語り直し |
研究実績の概要 |
最終年度であったH29年度には、現在初任期を生きている2名の教師の語りの分析を通して、若手教師の初任期における経験と成長の様相をとらえること、とりわけ経験を語り直すことで明らかにされる教師の省察の深化について考察することを目的とした。特に約一年の時を置いてなされた同一の事象に対する語り直しに表れる教師の意識の変容、事象をとらえる枠組みの変容に着目することで、若手教師の成長のありかたをとらえることができ、そこから教師の成長を支えるための環境や枠組みについての示唆が得られた。 「語り直し」は、教職を続ける自信が持てなかったほどの初年度の経験の苦しさについての客観視を助け、サポート環境の問題や、思わぬ支えを認識するというように複眼的な見直しを促し、同時に若手教師の自己理解を深める機会となったことがわかった。またグループインタビューの設定は、同じような経験を共有できる他者の声に触発されて、以前には言語化されなかった内容なり揺らぎなりを新たに表現し、語ることを通して省察する場となることが示された。協同のナラティブの場がこうしたとらえ直しを引き出すということ自体が、教師の仕事を支える力となるといえる。ナラティブ・インクワイアリーの研究方法の本来的な特徴の一部と考えることができる。 当初2年目に計画していたカナダのDr. D. J. Clandinin との研究交流が、最終年度である今年度に実現した。クローズドの研究セミナーにおいては、ナラティブ・インクワイアリーの哲学的ベースについて質疑を行い、研究方法の特徴に関する理解を深めた。また、本研究のグループインタビューの解釈について、更に話し合うことができた。講演会においては、クランディニン博士のグループの初任期教師の研究について、振り返りやその後の展開についても詳しく聞くことができ、今後の教師教育実践への示唆が得られた。
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