研究課題/領域番号 |
15K04251
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研究機関 | 武蔵大学 |
研究代表者 |
金井 香里 武蔵大学, 人文学部, 准教授 (20722838)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 多文化 / 共生 / 教師教育 / カリキュラム開発 / 多文化教師教育 / 大学教職課程 / 教員研修 |
研究実績の概要 |
平成27年度に行った内容は、以下5点である。 1、日本における多文化共生の概念および教育実践に関する最新の研究動向を調査するとともに、米国における多文化教師教育(multicultural teacher education)に関わる先行研究を講読し、日本における教師教育カリキュラムの開発にとって有効な理念、教育内容、教育方法、実践事例等を整理検討した。 2、神奈川県川崎市教育委員会を訪問し、教育委員会主催の教員研修に関する聴き取りならびに今後開発する教師教育カリキュラムの実証的検証を行うためのフィールドの調整、資料の収集を行った。さらに、フィールド候補となった市内公立小学校2校を訪れ、関係教員を対象に教員研修の現状やニーズに関する聴き取りを行った。 3、9月に信州大学で開催された日本教師教育学会第25回研究大会に参加し、自由研究発表「多文化共生をめざす教師教育カリキュラムの開発―米国における多文化教師教育研究からの示唆―」を行い、教師教育、米国のカリキュラム研究を専門とする研究者と交流し本研究に対する有益なコメントを得た。 4、外国にルーツのある大学生5名を対象に日本の小中高校における被教育経験についての聴き取りを行い、教師教育カリキュラム開発のための貴重な示唆を得た。 5、教師教育のフィールド(大学教職課程)で実施するカリキュラムの開発を行った。具体的には、勤務先の大学にて、カリキュラム編成が授業者の自由裁量に委ねられている「教育学特論」の授業(全15回)を中心に、その他の担当授業科目においても適宜盛り込むかたちで行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
教師教育カリキュラムを実施するフィールドの調整やニーズの聴き取りと並行して、米国の多文化教師教育に関する先行研究にもあたりカリキュラム開発を行った。この過程において、大学教職課程の学生を対象とする教師教育カリキュラムの開発と、現職の教員を対象とする教師教育カリキュラムの開発を同時に遂行することは困難であると認識し、前者(大学での学生を対象とする教師教育カリキュラムの開発)を優先したため、後者(現職の教員を対象とする教師教育カリキュラムの開発)には着手できていない。しかしながら、前者(大学での学生を対象とする教師教育カリキュラムの開発)には計画以上の進展があったことから、全体としては、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、下記の作業を行う計画である。 1、多文化共生のための教師教育カリキュラムの開発:大学における教師教育カリキュラムの開発は、引き続き行う。平成27年度に実施できなかった現職の教員を対象とする教師教育カリキュラムの開発については、まず、夏休み中に地方自治体教育委員会や学校を訪れフィールドの調整ならびにニーズの聴き取りを行った上で、平成28年度後半より着手する。なお、当該カリキュラムの実践的検証も、研究期間中に順次行う予定である。 2、多文化共生のための教師教育カリキュラムの実施:本年度は大学で実施する(したがって、下記3および4は、大学における教師教育カリキュラムの開発に関わるものである)。「教育学特論」(全15回)を中心に、その他の教職課程の担当授業科目においても適宜行う。 3、カリキュラムに対する実践的検証(評価とフィードバックの活用):質問紙調査、面談等の方法で、受講者を対象にカリキュラム評価を行い、カリキュラムの有効性(多文化共生に関わる価値観、態度、ものの考え方の変容、カリキュラムの包括性と持続可能性に対する認識の形成度合等)を計る。受講生によるフィードバックは、カリキュラムの再構築に生かす。 4、カリキュラムの開発状況、実践状況をまとめ、理論的考察を加えた上で、学会発表および論文執筆を行い、研究成果を発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度、上記の通り次年度使用額が発生したのは下記理由による。 1、聴き取りの記録のために使用するICレコーダーは、すでに所有しているものを使用し、購入しなかったため。 2、「現在までの進捗状況」にも記載した通り、研究の進捗状況につき、複数地域の教育委員会ならびに学校を目的地とする、フィールド調整ならびに聴き取りのための出張を延期したため。
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次年度使用額の使用計画 |
以下の通りに使用することを計画している。 1、平成28年度中にICレコーダーの機種を選定の上、購入する予定である。 2、研究計画作成時点で予定していた地域の教育委員会ならびに学校への出張を実施し、使用する予定である。
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