研究課題/領域番号 |
15K04253
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
大石 幸二 立教大学, 現代心理学部, 教授 (80302363)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 教員 / 職能発達 / キャリアデザイン / 現職研修 / 授業実践 / ふり返り / 省察 / 反省的実践家 |
研究実績の概要 |
第1年次の研究では、教員の省察に関する調査が課題であった。本研究課題は、教員の中に、優れた実践家が存在することを前提として計画した。授業実践の中で瞬時に相互作用の分析を行い、即座に授業に反映させて相互作用の調整を行うことができる初任者や熟練者が存在することに着目している。 東北地方では中学校および高等学校の教員の授業をサンプルとして、授業場面の参加観察と授業者の自評の収集を行った。また、中国地方では小学校の教員の授業をサンプルとして、同様に授業場面の参加観察と授業者の自評の収集を行った。学校種を問わず共通していたのは、1.授業終了直後に、直ちに本時の振り返りを実施していること、2.授業者の自評には、教員自身と児童生徒双方の行動に関する記述が見られること、3.これらの振り返りや記述は、校務分掌や教職経験年数には必ずしも依存しないことが示唆された。このことについては、第2年次に事例を重ねて、前記の示唆の確からしさが高められた時点で、「事例研究」として学術研究論文を執筆投稿する計画にしている。 なお、第1年次に、「総説論文」を投稿することを目標にしていた。計画どおりに、教員の「省察」を高める条件分析に関する学術研究論文を執筆・投稿・公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していたとおり、教員の「省察」を高める条件分析に関する学術研究論文を執筆・投稿・公表した。これにより、本年度の目標は達成することができた。けれども、研究計画段階では、教員の授業サンプルをより多く収集し、多面的に検討した上で、直ちに「事例研究」を執筆・投稿することを企図していた。しかしながら、限られたエフォートの中で、これ以上の進度で研究計画を先に進めることは困難であった。これが、「当初の計画以上に進展している」と評価しなかった理由である。
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今後の研究の推進方策 |
第2年次の研究では、教員の相互作用の特徴把握の調査が課題である。第1年次の研究に引き続いて、自分自身の授業や巡回相談時の教員の語り、あるいは授業研究協議会における自評などをできる限り広範に収集して、これを量的および質的に分析することにしたい。この研究計画を推進するため、第1年次はうまく進めることができなかった、同時並行的にデータ(教員の授業サンプル)を収集することにしたい。幸い、第1年次研究費の未使用額が約 200千円あるので、これを有効活用することにより、推進を図っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
第1年次は、教員の省察に関する調査を研究課題とした。「物品費」に未使用額が生じた理由は、調査協力を得た出張先において必要な設備備品を、無償貸与できたことによる。併せて、教員の省察に関する調査に関して、出張することができた日数の関係から、抽出した標本数が少なくなった。そのため、消耗品を含む「物品費」の節減につながった。「人件費・謝金」に未使用額が生じた理由は、逐語記録の作成を研究代表者が手作業で行い、加えて英文校閲料も自弁したことによる。「その他」に未使用額が生じた理由は、総説論文(※原著として採択)の配布先が絞られたため、当初計上した予算を執行せずに済んだことによる。なお、未使用額については、調査のための国内出張旅費として執行する予定であったが、これを見合わせたことが、最終的に未使用額が生じた理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
第2年次は、教員の相互作用の特徴把握の調査を研究課題とする。そして、事例的な研究を行うことが目標となる。「物品費」の中の図書・資料の予算が不十分であったため、次年度使用額の一部を、この費目の予算に充当する。また、第1年次の実績により、宿泊日数を1泊ないし2泊とする旅程では、自然で実際的なデータ(教員の授業サンプル)の収集に限界があることが明らかとなり、次年度使用額の一部を、旅費にも充当して質の高いデータの収集に努める。
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