研究課題/領域番号 |
15K04253
|
研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
大石 幸二 立教大学, 現代心理学部, 教授 (80302363)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 語り / 言語化 / 言語行動 / ふるまい / 非言語行動 / 自閉スペクトラム症 / 相互作用 / 授業実践 |
研究実績の概要 |
第3年次の研究では、リアルタイム・モニタリング(RTM)訓練の実行と効果評価が課題であった。本研究課題は実際の授業場面のシーンを抽出し、抽出したシーンを様々な形式(静止画か動画か)および様々な媒体(紙媒体か映像媒体か、それとも編集加工を行ったうえで解説を加えた映像媒体か)で提示し、この形式と媒体の違いによる授業実践への影響を検証することを目的とした。 本研究のフィールドのうち東北地方では、第1年次および第2年次に引き続いて中学校および高等学校の教員の授業をサンプルとして、授業場面の参加観察と授業者の自評の収集、そして授業場面の映像記録も収集した。また、中国地方では、小学校の教員の授業をサンプルとして、同様に授業場面の参加観察と授業者の自評の収集を行い、フィードバック用に映像記録も収集した。さらに、関東地方では、特別支援学校の教員の授業および個別指導場面のデータを収集した。前記のフィールドにおいて、いずれも経験が浅い教員の反応を含む、貴重で価値ある資料を入手することができた。 第3年次に得られた成果は、以下の3つである。 1、研究実施者から提示されるフィードバックにより、教員の語りが変容・遷移することを明らかにしたこと。そして、そのことにより児童生徒の行動調整機能にも影響が及ぶことを示したこと。(“Psychology”に掲載) 2、研究実施者から提示されるフィードバックのうち、身振りや視線・表情といったふるまい(非言語行動)も教員の語り(言語行動)に影響を及ぼすことを明らかにしたこと。(「日本特殊教育学会」第55回大会にてポスター研究発表) 3、教員の語り(言語行動)の変容と教員のふるまい(非言語行動)の行動間の相互作用について、両者の関連を検証したこと。(「発達障害研究」に掲載)
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していたリアルタイム・モニタリング(RTM)訓練の実行と効果評価に関する基礎的・実証的研究については1編の学術研究論文として公表した。さらに教員の言語行動と非言語行動の行動間相互作用についても1編の学術研究論文と1件の学会発表として公表した。このように研究は、おおむね当初の計画どおり順調に進展している。 なお、第4年次の研究推進において学校の授業場面のシーンに加えて、病院内で過ごす児童生徒や外来受診している児童生徒と心理士との相互作用について、本研究で考案している仕組みが応用できるか否かについて確認するための交渉も追加的に進めることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
第4年次の研究では、教員に対するリアルタイム・モニタリング(RTM)の実行がどの程度の持続的な影響を及ぼすのかということ(維持効果)を検証することが課題となる。前記の追跡調査とともに、研究実施者が非監督の条件下でのデータ収集を可能にするための機器設置が必要となる。そのために、第3年次未使用額(約920千円)を充てて研究推進を図っていく。 また、RTMを発展的に適用するための研究(保健医療機関における追加的調査の遂行)は本研究計画の信頼性を担保する上で有益である。この追加的調査を第4年次に軌道に乗せることができた場合には、第5年次に1年間の研究期間延長申請を行う場合がある。科学研究としての確度を高めるためである。 なお、本研究におけるRTMは、人間工学の知見をもとに労働安全・衛生分野で考案されたリアルタイム・フィードバック(RTFB)にヒントを得ながら、ヒューマンサービス分野への応用を期して、独自に案出したものであった。先行研究が対象とする機器操作や事務系軽作業の場合には、まさに「リアルタイム」であることが重要である。ところが教育実践では、教卓上への授業場面のシーンのポップアップにより教員の目が児童生徒から離れるというリスクを抱えることになる。よって、今後の研究では、教員の省察が最も高まる最適な時間的距離を考慮に入れてフィードバックのタイミングに関する探求を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 第3年次研究までに執行予定であった物品費が残額として残っている。これは、モバイルアクションカムのアクセサリーであるライブビューモニターの性能が予想よりも良質であったためであり、リアルタイム・モニタリング(RTM)を遂行する上で十分な仕様であったことが物品費の経費の節減に繋がった。最終年度(第4年次もしくは延長申請を行った場合は第5年次)に維持効果を検証するとともに、RTMを発展的に適用するための研究を円滑に遂行するために研究費の一定額を次年度に繰り越す必要があった。 (使用計画) これまでに公表してきた研究は、いずれも事例を基礎としており、エビデンスとしての弱点を抱えている。多数のデータを集めるため、海外視察を含めて出張する必要があり、旅費に振り替えて(各費目の50%を超えない範囲)、研究の推進に資する執行を予定している。
|