本研究では、教師が教室内に居ながら現場研修を積むことができるリアルタイムの研修システムを開発した。教室における日々の相互作用を研修の素材とするリアルタイム・モニタリング(RTM)により、年齢・経験を超えて教師が意欲的になるという画期的な成果を得た。 延長期間(令和元年度)の研究課題は、社会実装に向けた再現実験であった。オペラント条件づけを含む基本的学習メカニズムを理解し、単一事例デザインを含む行動観察研究法に慣れた教師であれば、RTMの手法を修得し、これを応用できた。そのため、これらの前提条件を十分に満足するために「トリプルP」の講習会を実施(研修群)し、その上で研修群と統制群に対してRTMの研修を行い、研修効果の差異を検証した。 教育行政担当者や学校心理学専門家を含む特別支援教育に携わる教師25名が、本研究に参加した。参加者全員が「人に行動変容が生じる学習メカニズム」を説明する応用行動分析の予備知識を有していた。研修群には6名が、統制群には19名が無作為に割り当てられた。そして、研修群のみ「トリプルP」の講習会を付加的に行い、その上で両群にRTMの研修会を実施した。 両群で、発達支援時の子どもとの相互作用で何を重視するのかを群間比較した。その結果、両群が重視する事項は基本的に差異がなかった。けれども、研修群では、おしなべてそれぞれの事項に対する重視の度合いが高くなった。研修群では「トリプルP」の講習会を受講して、学習のメカニズムの再確認を行うことで、自らの実践に対する省察力が高まった。とくに、指示や行動の仕方を明確に子どもに知らせることで、子どもの良い行動を引き出そうとする試みが顕著に変化した。 事前に予想されたとおり、研修群での効果が検出された。基本的な学習メカニズムをふまえ、ロールプレイを事後的に(リカレントとして)行うことは、教師の実践技術に関する省察を高めると推測された。
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