研究課題/領域番号 |
15K04256
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研究機関 | 桐蔭横浜大学 |
研究代表者 |
谷本 直美 桐蔭横浜大学, スポーツ健康政策学部, 准教授(移行) (10724198)
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研究分担者 |
名達 英詔 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (90510272)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 発話分析 / 子どもの主体性 / 対話 / メンタリングプログラム |
研究実績の概要 |
図画工作科では、授業において主要な部分を占める個別対話場面での熟練教師の発話についてGRの働かせ方に焦点を絞った分析を行い、その内容とスタイルから構成される教師の発話分析の指標を抽出した。分析方法は実践授業のビデオを対象としたコーディング・スキーマを用いた。次にこの指標を手がかりに若手教師2名の実践を分析、実践者とメンターによるメンタリング及び音楽科との合同研究協議会・合同学習会(子どもが輝く授業の会)を実施し、授業実践の改善を図った。その結果、GRの働きかけ方に着目して実践を振り返ることにより、授業におけるメタ認知能力が喚起され、発話の働きを調整した授業実践がなされるようになった。また、協議の結果から子どもの主体性がより発揮されるために、子どもの興味関心や、発想、表現技能に関する視点をメンタリングに加えることが求められるのではないかとの見方が得られた。 音楽科では、熟練教師、中堅教師、若手教師各1名を対象とした実践分析を実施した。特に若手教師については28年5月、7月、11月の3回にわたり授業を撮影・録音して図画工作科で抽出された指標をもとに発話分析を実施し、その結果をふまえ指示から対話へと意識を変えていくよう促すメンタリングを行ったところ、「行動の指示・促し」が初回の39%から3回目には22%に減少し、子どもから学習のねらいに結びついたつぶやきが生まれる等、子どもの主体性がより発揮される授業へと変容が見られた。また熟練教師の授業では「行動の指示・促し」の割合が低く「問いかけ」や「受容」の割合が高い等の特徴が表れ、インタビューでは授業中の指導や判断が自身の個人史によって支えられていることも明らかになった。 研究協議会は28年度中に5回実施、また新たに図画工作科と音楽科の合同学習会「子どもが輝く授業の会」をたちあげ、平成28年9月と29年2月に3回実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の研究計画では以下の4点を予定していた。 ①図画工作科では平成28年6月を目処に個別対話と非言語コミュニケーションに伴うGRについての研究をまとめ、その結果を生かした若手教師の授業実践と分析を兼ねたメンタリングプログラムの試行も含め、延べ4名の若手教師に対して4回実施する。②音楽科では新たな分析方法を定めて前年度の実践記録を再分析したうえで、熟練、中堅、若手教師各1名の授業分析を新たな方法で行う。8月に授業研究会を行い、その後のメンタリングプログラムに反映させる。③メンタリングプログラム実施内容をまとめたものを合同研究協議会に持ち寄り、プログラムの再設定と28年度の研究考察を行う。④研究成果については、研究者の所属する大学、学会の紀要並びに学会誌等で発表する。 これに対し以下のような達成状況からおおむね順調と判断している。 ①図画工作科では個別対話と非言語コミュニケーションについて、まず個別対話の発話分析に焦点を合わせた。これはGRに関わる研究対象として先行研究の状況からも発話を対象とすることが妥当であること、客観性が高く若手教員の理解を助け、実践により還元しやすいことを考慮したためである。メンタリングはそれぞれ2名の若手教師にそれぞれ1回と2回実施した。当初の予定に対して不足はあるが、分析・検討によってその効果と課題を見出すことにつながった。②音楽科では図画工作科が先行的に設定した指標を用いて前年度の実践を再分析した上で、若手教師3回、中堅、熟練教師各1回の授業実践を分析し若手教師のメンタリングを3回行った。その結果熟練性の表れをとらえ、それをふまえて若手教師に対話を促すメンタリングを行うことができた③5回の研究協議会、2回の学習会を重ね、プログラム改善が進んだ。また次年度研究計画も具体的に設定できている。④本研究を進める手がかりとなる発話分析の指標を示した。
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今後の研究の推進方策 |
29年度は若手教師の対象者を広げ、7月、9月、11月にメンタリングを実施する。合わせて研究協議会、学習会をもち、以下の点を明らかにする。 ①メンタリングプログラムの運営…事前事中事後に行うべき内容も含めた個別プログラムの流れ、学習会の持ち方、効果的なプログラム運営の枠組みと方法を明らかにする。 ②メンタリングプログラムの内容…教師の発話分析・検討・実践への還元、学習会によるメンタリング成果の共有と相互啓発、学習会による指導観・教育観・子ども観に着目した相互啓発について明らかにする。 ③メンタリングプログラムのツール…発話分析指標を改善し、指導概念チャートの作成による教師のメタ的認識を助ける。 ④研究成果については研究者の所属する大学、学会の紀要並びに学会誌等で発表する。また年度終盤には報告冊子を作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
音楽科で予定していたiPadを購入しなかったため物品費に余剰が出たが、その分東京・神奈川と北海道とで研究協議会や学習会を行ったため、旅費は予定より多額となった。また図画工作科では逐語記録作成数が予定より少なかったうえに研究者自身が記録作成を行った時期もあったため、謝金の使用額が低くなった。
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次年度使用額の使用計画 |
29年度は最終年度で報告書作成を予定していること、さらに授業者を増やす予定であることからその他及び謝金を増額する予定である。物品費については研究上の必要からiPadの購入を検討したい。
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