研究課題/領域番号 |
15K04260
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研究機関 | 愛知文教大学 |
研究代表者 |
水野 正朗 愛知文教大学, 人文学部, 講師 (40738217)
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研究分担者 |
副島 孝 愛知文教大学, 人文学部, 教授 (30593107)
坂本 篤史 福島大学, 人間発達文化学類, 准教授 (30632137)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アクティブ・ラーニング / 形成的評価 / ルーブリック / 協同学習 / 協働学習 / 学び合い / 授業分析 / 授業諸要因 |
研究実績の概要 |
【1.背景】従来型の授業評価では総括的な評価または個人別評価となり、協働的な学習過程そのものを評価し、それを改善に生かすことが困難だった。協同的問題解決によって知識を共同構築する授業の実現、持続的な改善を可能にする授業評価法の開発は、教育学的の課題である。 【2.目的】知識の共同構築を目指す集団思考の過程を含む授業における学びの過程を自己評価・相互評価する方法を開発するとともに、その評価を教室での学びにフィードバックすることで、個人と集団が相互作用する学びの特質を明らかにすることを目的とする。 【3.方法】(1) 探究的な相互対話によって知識を共同構築する実験授業を実施し、(2) その集団的な学習活動過程を自己評価・相互評価による改善手続きを導入することで、(3) 間主観的な知識獲得の過程で働く授業諸要因を明らかにするとともに、(4) 集団的な学習活動の評価に、教師と学習者が共同参画することが、集団的な思考過程の促進および個人レベルの認識深化や学習の転移にどのように寄与するかを調査する。 【4.初年度の成果】平成27年度は、(1) 相互対話や協同的問題解決の過程を含む探究的な「学び合い」の授業を試行し、(2)その集団的な思考過程を評価・改善するための評価規準表を八田昇平(1963)「授業分析の仮説的視点」をもとに作成した。そして(3) まず国語の授業において、その評価基準表を用いた自己評価・相互評価を実施した。(4) その結果、生徒たちが、自分自身の学びと仲間の学び、教師の指導を相互に関連づけて評価することは、生徒と教師の授業省察を促進することが明らかになった。また、(5)グループを活用した授業に地域全体で取り組んでいる学校教員に授業アンケートを実施した結果、「学び合い」によって、生徒が学び方を学ぶだけでなく、主体的な学習指向をもつ学習者になることが期待されていることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画通り、探究的な相互対話によって知識を共同構築する授業モデルを開発して実験授業を試行することができた。さらに、集団的思考過程の形成的な評価方法を研究し、八田(1963)の「授業分析の仮説的視点」をもとに「学び合い」の授業を形成的評価する評価規準表のプロトタイプを開発し、一部の実験授業で試行した。 また、学び合いの授業づくりを市全体で推進している小牧市に在職する小・中学校教員(約600名)を対象に、ペアやグループを授業でどの程度の頻度で導入しているか、そのような協同的な学びに対して、どのような意識を持っているかを調査した。 以上の調査成果から、(1) 集団的な学習過程の自己評価・相互評価が、生徒だけでなく教師の授業省察を促進すること、(2) 生徒同士が学び合うことで、生徒たちが学び方を学ぶだけでなく、主体的な学習指向をもつ学習者になることが期待されること、などが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
対話による知識の共同構築過程の形成的評価に関する実証的研究を、初年度の【評価規準表のプロトタイプの開発】の段階からもう一歩進め、【生徒参加型の形成的ルーブリック評価の実施】に発展させ、それを重点的に研究する。集団的な思考過程の評価規準を生徒と協同して作成することは、生徒は学習において何が要求されるかをよく理解して動機付けも高まることになるだけでなく、自分と仲間の学び方への洞察を深めることにもつながるとともに、生徒たちの既有知識、スキルの程度、自己評価の能力、意欲に関する貴重な情報が、教師にフィードバックされるだろうと期待されるからである。 さまざまな学校で複数の教科における授業開発を推進するとともに、授業開発と形成的評価の実施から得られる諸情報・諸知見をもとにして、対話的で探究的な知識の共同構築や個人における知識の主体的な獲得過程において有機的に働いている授業諸要因を解明する取り組みを推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者の一人(坂本)において、研究の進展に合わせて、次年度以降に研究成果の学会発表のための旅費、また、取得したデータの解釈、今後の研究の方向性や、最終的な成果報告の取りまとめのために、研究者間で打ち合わせの機会が増加することから、福島-名古屋間で多額の旅費が生じることが見込まれたため、旅費、物品費を支出した残金を次年度に使用することにした。
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次年度使用額の使用計画 |
福島-名古屋間の旅費 福島-三重間 の学会発表旅費(日本協同教育学会第13回大会)
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