研究課題/領域番号 |
15K04265
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
小田 義隆 近畿大学, 生物理工学部, 准教授 (50455094)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 師範学校の統廃合問題 / 池田師範学校 / 小西治兵衛 / 改築移転阻止運動 / 大阪府会議事録 / 北海道議会議事録 |
研究実績の概要 |
本研究は、教員養成大学・学部に対する地域社会の考え方を考究することを目的としている。これらの考え方を抽出するには、教員養成大学・学部の前身であった戦前の師範学校における再編・統廃合問題を取り上げ分析することによってなせると考える。各都道府県に設置された師範学校の再編・統廃合に、どのような組織・集団が関わり、どのような制度が検討されたのかを歴史的に考察するため、師範教育令制定とともに戦前の1道府県に2つ以上の師範学校を設置した11道府県を対象に分析を行う。 本年度は、前年度に完了できなかった北海道の資料調査および議会議事録の収集分析を行った。さらに、前年度、大阪府議会での師範学校統合案と統合反対案の議論を府議会議事録で分析したものを裏付ける、池田師範学校の統合反対運動の記録を発見し、反対運動の組織・行動などを分析した。 まず、北海道における師範学校統廃合問題は、明治中期は函館県、札幌県、根室県の三県制の三県一局体制を解消し、師範学校の統廃合が行われた。しかし、明治期の教員不足を解消するべく大正3年に函館師範学校を開校し2校体制となった。その後の展開は、他の府県が財政の関係で師範学校を統廃合する傾向であったが、北海道は教員不足のため、大正12年には旭川師範学校を開設し、釧路にも師範学校を設置しようという議案が上がり、むしろ師範学校を拡充する特徴があった。また、女子師範学校の整備が遅れているので、女子師範学校の設立に関する議題が起こり、存廃計画は存在しない特徴を有した。 大阪府における師範学校統廃合問題に関しては、池田師範学校改築移転阻止運動の実態を究明した。池田町ゆかりの小西治兵衛を中心に池田町民が一丸となって運動を発展させていったこと、そして小西の人脈(運動家と政治家との関係)が中央政府を動かすことに繋がったことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該13師範学校を前進にもつ教員養成大学・学部の年史の収集を継続した。大阪・北海道・愛知・熊本に関する資料収集が進展した。統廃合反対運動に関する資料の発見に努めたが、大阪における改築移転運動の資料の発見が研究を大幅に進めることとなったが、その他の地域における同様の資料がまだ見つかっていないことにより若干の遅れが生じている。引き続き調査を進め、資料の有無により分析の方法等を検討していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究課題の推進方策については、以下のように考えている。 ・大阪青年師範学校等、新制大学へ昇格時に大阪教育大学に集約されなかった学校の資料を収集する。 ・前年度に引き続き、基本的資料で知り得た事実を第一次資料で裏付けるべく公文書館・中央図書館・区役所・市役所、町役場に所蔵される資料の収集に努める。 ・収集した資料を総合的に分析し、師範学校統廃合問題の実態をまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)本年度は本務校の校務との関係で実施できなかった調査が生じてしまい、旅費に関する研究費の執行ができず、当初計画より使用量が減り、次年度使用額を発生するに至ってしまった。
(使用計画)次年度は最終年度であるため、総合的に分析の必要があり、補完すべき資料の発掘に努めるため広範囲にわたる地域への調査を計画している。
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