本研究では、2001年のピサ・ショック以降のドイツの教育改革を背景に、にわかに活発な展開を見せ始める美的・感性教育をめぐる議論に目を向け、そのディスクールを整理し、そこに芸術科の教科としての新たな理論的再編の兆しを見て取ろうと試みた。その際、改革の流れに沿って「イメージ・コンピテンシー」の概念をもとに教科のスタンダード化をはかろうとする各州の取り組みと同時にそれが孕む様々な問題を分析する一方で、こうした動向に対する批判も合わせて俎上に乗せた。そこでは、とりわけ現代美術の戦略にインスピレーションを得つつ、それを梃子に芸術教育の刷新をはかろうとする諸潮流も対比的に取り上げ、その論点を吟味した。
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