本研究は、大正期から昭和初期の仏教日曜学校で宗教的講話以外に多様な児童文化活動が行われていたことに着目、その実態の把握と教育的・文化的意義の究明を目指したものである。2019年度は、研究成果のまとめにむけて、未確認資料の調査・資料収集に力を注いだ。地域資料の充実した公立図書館や日曜学校関係資料を多く所蔵する図書館などで調査を行い、仏教の各宗派における日曜学校の展開と児童文化との関わりを明確にするために必要な資料を入手した。 また、これまで数年にわたって収集してきた資料を解読・整理し、仏教日曜学校関係者が児童文化活動についてどのような考えを持っていたのか、当時の仏教童話にはどのような作品がありどのような考えで制作・提供されていたのか検討した。仏教童話に関しては、同時代に「法華文学」を主張した宮沢賢治の童話との違いも確認し、そこからは賢治童話の特徴の意味・意義も新たに浮かび上がってきている。その成果は宮城県の子ども読書活動担当者のための交流学習会で行った講演に生かすことができた。 さらに、仏教日曜学校の成立と展開、その時代背景を再整理した。仏教日曜学校で児童文化活動が推進された時期とその意味がみえてきたが、未確認資料の調査に時間がかかり、予定していた論文発表は投稿準備の段階までで終わっている。これは、今後、発表を実現したいと思う。 研究期間全体を通して、仏教日曜学校における児童文化活動の教育的・文化的意味・意義は時代の動きとの関連が深く、明治から昭和初期までの間に時代的変遷がみられることが明らかになった。また、仏教日曜学校関係者の児童文化活動に対する考え方には幅があるが、それは宗派による違いというよりも教育観の違いではないかという考えを得た。今後、大正期から活発化する仏教系大学の学生による児童文化活動との関係も視野に入れて、宗教と教育・児童文化との関わりの追究をさらに進めていきたい。
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