研究課題/領域番号 |
15K04276
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
新谷 由紀子 筑波大学, 利益相反・輸出管理マネジメント室, 准教授 (40333281)
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研究分担者 |
菊本 虔 筑波大学, 名誉教授 (50284229)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 利益相反 / マネジメント / 運用基準 / 大学 / 産学連携 |
研究実績の概要 |
利益相反マネジメントについては法令等でその基準が明確に示されているわけではなく、判断は各大学に任されている。このため、各大学において、利益相反問題をどのような基準でどのように審査し、どのような結論を導けばよいのかということが必ずしも明らかではない。こうしたことが各大学のマネジメントに支障を生じさせていると想像される。今般、利益相反マネジメントの運用のための基準について明らかにするために、大学教員及び大学関係者の意識調査を行った。 調査対象は、全国の国公私立大学781か所のうち、医学部が設置された79大学と、それ以外に平成25年度に民間企業との共同研究件数が多かった上位21大学の計100大学である。この100大学から教員を各大学8人計800人無作為抽出した。さらに、国立大学法人経営協議会外部委員、公立大学法人経営審議会外部委員、私立大学外部理事を各大学2人計200人無作為抽出し、合計1,000人を対象にアンケート調査を実施することとした。調査票は質問紙郵送法により、調査実施日は平成27年7月6日、締切日は同年7月31日とした。調査票回収率は大学教員20%、外部委員13%、全体で18%となった。 本調査では「臨床研究に関連した寄付金」と「大学発ベンチャーとの契約」という二つの仮想事例を提示して意見を求めた。この結果、臨床研究は寄付金との関係でいえば利害関係の情報開示を徹底させることが支持され、また、研究計画の中止または研究代表者の交代の判断をするべき基準についての意識などが判明した。さらに、大学発ベンチャーについては、収入や時間等について一定の条件を課した上で代表就任を認め、また、共同研究や製品購入も利害関係をなるべく排除した上で契約締結を可とする意見が多く支持されている。具体的な条件に関する意識についても、今回の調査で判明し、整理することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成27年度中にアンケート調査票の検討を集中して行った結果、同年7月には調査票が決定し、1,000人に対する調査票の発送準備も整い、アンケート調査を実施することができた。この結果は平成28年1月には報告書(136頁)にまとめ、アンケート回答者のうちの希望者のほか、アンケート調査の対象100大学の産学連携担当部署等にも配布した。また、当該報告書をインターネット上で公開した(機関リポジトリ及び所属部署ホームページ)。さらに、静岡大学、長崎大学等で利益相反に関する講演を実施した時にも紹介して普及に取り組んだ。 上記の調査研究報告書『大学における利益相反マネジメントの運用基準等に関する調査研究』は、当初研究計画で作成を予定していた「各大学における利益相反マネジメントの運用基準策定のための参考資料」及び「教職員の研修のための指導資料」の中核となるデータを提供するものであり、そうした意味でも、研究計画は当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、平成27年度に実施したアンケート調査結果をさらに分析・検討し、学会発表や論文発表を行う予定である。また、今回実施したアンケート調査は、基本的には利益相反に関する具体的事例とそれへの対応案についての選択式の回答であるため、対応策に対する支持割合に関する記述を含む資料を作成するほか、利益相反についての基礎知識に関する記述や欧米の大学の実態などの参考となる資料も加え、各大学における利益相反マネジメントの運用基準策定のための参考資料を作成することとしている。
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備考 |
※つくばリポジトリでも閲覧可。
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