研究実績の概要 |
近年、大学の利益相反マネジメント体制が徐々に整備されつつある一方で、利益相反が一因とされる事件がたびたび生じている。このことはマネジメント体制が整っても、それが必ずしも機能していないことを示唆している。すなわち、各大学で具体的な対応を迫られたときに、判断するための参考資料がほとんど存在せず、結果的に利益相反マネジメントの運用に支障を来すなどのことが起こったのではないかと推測される。 このため、平成27年度は、産学連携に伴う利益相反マネジメントに関する典型的な仮想事例を作成し、それらへの対応案の選択肢を用意して、主要な国公私立大学の教員、国立大学の経営協議会の外部委員、公立大学の経営審議会の外部委員、私立大学の外部理事計1,000名に対してアンケート調査を実施した。この結果、具体的な利益相反問題に対してどのような対応が支持されるかについてその意識が明らかになった。この調査結果については、報告書『大学における利益相反マネジメントの運用基準等に関する調査研究』のほか、論文等にまとめて発表した。 また、平成28年6月に、この調査結果を中心として、利益相反に関するこれまでの調査研究結果の中から利益相反マネジメントの運用の参考となる成果等を追加し、大学において利益相反マネジメントに携わる実務者等の手引となるよう『大学における利益相反マネジメントの実質化のために-運用の手引-』を発行した。 平成29年度は『大学における利益相反を学ぶ-利益相反研修用テキスト-』を刊行した。本テキストは、平成28年度に制作した手引の中のエッセンスを抜き出し、また補足を加え、かつ、利益相反について理解するための重要な設問を作成して提示し、それらに対する考え方や解説を掲載したものである。手引と併せて研修等に活用でき、大学の教職員が利益相反マネジメントを理解し、かつ、実質的な運用をしていく上での図書に仕上がった。
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