本研究は、カナダにおける道徳教育政策の形成過程を明らかにするとともに、各州で異なる学習ガイドラインに基づく道徳教科書の内容を比較検討し、多文化国家カナダにおける道徳教育政策の形成と運用実態を総合的に明らかにすることをめざした。 カナダにおいては、多文化主義の理念に基づく道徳教育の推進策や教授内容は、アカデミックな議論として活発に展開されるものの、現場の教員には政策や教授内容の系統性や一貫性が十分理解されぬまま授業が展開されていること及び現在、道徳教育を必修科目化している州、選択科目化している州、特定科目として設定しない州に分かれ、道徳教育の有り様も異なっていることを指摘した。
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