研究課題/領域番号 |
15K04279
|
研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
藤井 佐知子 宇都宮大学, 教育学部, 教授 (50186722)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 学校評価 / フランス / ボルドー / 学校改善 |
研究実績の概要 |
まず、昨年度ボルドー市で行った現地調査(大学区及び中等学校6校を訪問)の分析を行った。調査は、現在フランスで行われている二種類の学校外部評価、すなわち目標管理型評価(Audit)と参加型評価(AVP)の運用実態とそれに対するアクター(評価者、校長、教員)の見解を明らかにすることを目的とした。分析の結果次の点が明らかになった。①全体的に校長が両評価法に対して意義を認め、教員が問題を多く認識している。校長が意義として認めている点(問題意識の高揚、目標の共有、自校の客観的理解、改善における教師の自律性、教師による法規則の理解)について教員はほとんど意義を認めていない。②校長、教員とも、両評価法において共同的テーマ設定がなされていない点、評価者の役割・態度、Auditにおける情報の不正・隠蔽を問題としている。③校長はAVPのほうにより効果を見出している一方、Auditに対して、校長、教員とも学校改善支援や方向性提示において意義を認めている。以上の分析から、教員の参加により自律的学校改善の促進を意図したAVPが、実際には大学区当局のコントロール機能を抑えているがために、評価結果の活用が限定的になるなど、学校改善の自律性と行政側の対応の関係に多くの問題を残していることが明らかとなった。 これら実態分析より、学校改善における行政側の統制・指導のあり方が課題として導き出され、これに関する日本、フランス両国の研究を検討した。学校の質保証における自律性と改善支援のバランスを制度的にどう担保するか、については両国とも十分な研究蓄積がなく研究枠組み自体の確立が課題として残された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度実施した現地調査の分析は順調に進めることができ、オリジナルな見解を導き出すことができた。また、目標管理型評価(Audit)と参加型評価(AVP)の比較検討を行うことにより、学校改善、質保証に向けたアクターと管理職の位置と役割に関する分析枠組みを見出すことができ、これを比較研究に用いることの可能性について究明することができた。さらに、学校改善における行政側の統制・指導のあり方が課題として導き出され、これに関する日本、フランス両国の研究レビューを行い、多くの情報を得ることができた。次年度の研究にこれらが十分活かされると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度までに行った教育の質保証に関する議論と、地方教育行政当局と学校の関係構築について、目標管理型評価と参加型評価の比較検討から明らかになった知見を活用して、理論と実態の両面から整理を行い、質保証に関わる全体像を明らかにする。そしてそこにおける管理職と教員の役割、それを規定する大学区当局のコントロールと学校・教師の自律性との関係性を明らかにし、新しい質保証システムとして理論化して仮設的に提示する。その妥当性および本システムの有効性と課題を明確にするために、前2年間に行った現地調査先の行政官、研究者から研究レビューを受け、研究の検証を行うとともに、日本との比較を行い、質保証システムとしての教育行政手法の国際比較のための試案を作成する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
翻訳謝金が当初予定を下回ったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
図書費に充てる。
|