研究課題/領域番号 |
15K04284
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
榊原 知美 東京学芸大学, 国際教育センター, 准教授 (20435275)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 数量概念 / 多文化 / 保育 |
研究実績の概要 |
本研究は,多文化状況にある保育活動への参加を通した幼児の知的発達の過程とそれを支える保育者の支援の文化的特徴を解明することを目的とするものである。本研究では幼児の知的発達の中でも,特に数量概念の発達に焦点をあてる。保育の文化状況としては,保育者が文化的多数派とならない次の2つの状況,1. 文化的少数者の保育者が文化的多数者の幼児集団を保育する状況(状況1),2. 保育者集団内と幼児集団内に文化的多様性がある状況(状況2)を対象とする。 平成28年度は,はじめに平成27年度に状況1の園で収集した保育活動の観察データについて,ビデオ映像を分析可能な形に編集,文字化する作業を進めた。その後,子どもの数量概念の発達の基盤となる多文化状況の特性を把握するために,子ども間でのコミュニケーション構造の分析をおこなった。具体的には,中国から来日直後の中国語モノリンガル児に焦点をあて,保育活動への参加プロセスにおける日本語モノリンガル児やバイリンガル児とのやりとりに焦点をあてて検討した。その結果,言葉が通じない場合でも,子どもは子どもなりに自発的にコミュニケーションを工夫して共生を志向した多様な試みを行っていることが明らかになった。例えば,ジェスチャーを用いて一緒に遊ぶ,バイリンガル児に通訳を頼んだり,バイリンガル児が自発的に通訳をする,保育者の指示が理解できないときに周囲の子どもの行動をさりげなく模倣する,などの子どもの行動が観察された。保育活動の観察と保育者への面接データから,このような子ども同士の自発的な共生行動は,保育者が大切と考える中心的な価値は意識しつつも,中心的な価値と関係しない他の文化的側面については寛容性の高い態度で子どもと関わることで促されることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年12月より産前休暇を取得し,その後,引き続き産後休暇・育児休暇を取得したため,当初の研究計画の一部が達成できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年8月に育児休暇から復帰した後には,状況2の園における保育活動の観察データおよび保育者への面接データを,追加で補助者を雇用して,できるだけ速やかに分析する。そのうえで,状況1と状況2の比較分析を行う。最後に,多文化状況における幼児の知的発達を促す保育プログラムの基本構造の提案を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年12月より産前休暇を取得し,その後,引き続き産後休暇・育児休暇を取得したため,当初の予定通り研究を遂行することができなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
データ分析に関わる謝金に使用する。
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