研究課題/領域番号 |
15K04287
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
浅野 秀重 金沢大学, 地域連携推進センター, 教授 (90334789)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 9単位社会教育主事 / 社会教育主事講習 / 社会教育職員に期待される基礎力 / 社会教育職員養成 |
研究実績の概要 |
1 この研究は,社会教育職員養成における重要な機会の一つである「社会教育主事講習」を受講した社会教育主事有資格者(筆者は「9単位社会教育主事」とする。)たる社会教育職員を対象に,受講動機,講習中の学びの成果,講習で培われることが期待される基礎力,講習後の異動等を経ての「講習観」などを把握し,社会教育主事講習の在り方等への示唆を得ることを目的にしている。 2 統計的な検定によると,性別×受講動機では,「次年度以降の異動等により社会教育分野の用務に従事する可能性があるから」,「資格の取得が職務上必要だから」の項目は女性に比して男性に有意な差があり,「社会教育・生涯学習についての理論をしっかり学びたいから」,「将来活かすことの可能性がある資格と思ったから」,「自らの教養を高め,見聞や視野を拡げたいから」の項目が男性に比して女性に有意な差があった。 3 同様に,性別×社会教育職員に期待される基礎力では,「地域住民を組織する力」は,女性に比して男性に有意な差があるのに対し,「地域住民の経験や学びの成果を活かせる力」,「地域住民の声を傾聴する力」,「地域住民とコミュニケーションできる力」,「住民の思いを汲み取れる力」は男性に比して女性に有意な差が見られた。 4 また,受講者が作成するレポートを概観すると,講習を通じて,「社会教育は,人間が生きていく上で何にもかえがたい地域とのつながりを得る上での,とても重要な位置づけを持つ」,「地域住民に,地域変化に対応できる生き抜く力を育てること」,「(これまで)学びの種を蒔くばかりで,学びの芽が出て,学びの花が咲く工夫ができていなかった」ことなどを学んでいるように,講習は,社会教育職員の「学び直し」や意識啓発に重要な機会となっていることを伺うことができる。 5 こうした成果を,2つの学会での2件の自由研究,1件の招待講演として報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1 調査回答者265人の性別,年齢を基本にして,受講動機,学習成果,受講による変容,業務への反映,社会教育職員に期待される基礎力,社会教育への思いの問いとそれぞれクロス集計して有意差検定を行うとともに,受講動機を基本としてそれぞれの問いとをクロス集計して有意差検定を行った。 2 さらに,調査の記述的回答内容,社会教育職員としての業務従事歴,異動状況,ヒアリング「諾」とした回答等を考慮して対象者をしぼったヒアリングを行ってきた。 3 これらの成果の一部を日本社会教育学会での自由研究発表及び学会企画における成果発表並びに日本公民館学会での自由研究発表等の機会に報告するとともに,平成28年度金沢大学社会教育主事講習において研究成果の一端を受講者に直接講義し,社会教育職員としての意識啓発や力量形成に資してきたと考える。 4 こうした状況ゆえに,本研究課題はおおむね順調に進展していると自己評価したい。
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今後の研究の推進方策 |
1 平成29年度は,研究最終年度であることに鑑み,①ヒアリング調査の継続,報告書作成に向けた一定程度の情報を収集・整理すること,②日本社会教育学会,日本公民館学会研究大会で研究成果の発表を行うとともに新たに日本学習社会学会又は日本生涯教育学会での発表を予定したい。 2 さらに,本研究課題の総合的なまとめとしての研究成果報告の印刷・公表を行うことを通じて,今後の社会教育職員養成の重要な柱の一つとしての社会教育主事講習の内容,方法等の在り方に対する提言を試みたいと考える。 3 改めて,教育委員会に置かれる社会教育主事及び公民館主事等の社会教育職員は,地域づくりや地域の活性化,地方創生,自覚的な住民育てに資する学習事業や啓発事業の推進,地域における創造的な文化の創出に大きな貢献が期待される,いわば「学びとまちづくりコラボレーター」(浅野提起)的存在である。 4 このようなことを自らの内発的動機付けとして「社会教育主事講習」及び「9単位社会教育主事」を対象としたこの課題研究を誠実に推進していきたい。 5 併せて,本研究課題の成果を,共同研究者として推進する平成29年度採択課題「社会教育主事の養成と力量形成支援・キャリアパス形成支援に関する実証的研究」(17K04632 研究代表者 岡田正彦(大分大学))に活かしたいと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由としては,①物品費をやや抑制的に執行したこと,②統計分析やヒアリングに要した時間が当初予定した時間よりも少ない時間で終えたことにより人件費・謝金に残額が生じたこと,が挙げられる。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は,報告書作成のための印刷経費及び学会発表等の旅費が主たる支出費目になるものと思われるが,28年度残額は,都内で開催が予定されている日本学習社会学会(国士舘大学)又は日本生涯教育学会(国立教育政策研究所社会教育実践研究センタ-)での発表のための旅費に充当するなどして,助成金の適正な執行に努めることとしたい。
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