2014年の地方教育行政法改正により、首長と教育委員会で構成する総合教育会議を設置するととともに、いわゆる教育大綱の策定権を首長に与えたことで、首長主導型の地方教育行政制度を構築することに法的根拠が与えられた。これは、国があらゆる行政領域で包括的に推進する新自由主義的構造改革を、地方自治体の自治事務である教育事務にも拡張するため、地方公共団体における一般行政と教育行政を首長の下に一元化し、総務省が主導する地方行政改革を教育行政分野にも拡張することを目的とするものであると考えられる。 公教育における新自由主義的構造改革を推進するため、国が所管する公教育の質保証基準あるいは教育条件整備基準が実質的に切り下げられつつある。この基準切り下げを現実の教育・教育行政に適用するのは、制度上は学校管理者である地方公共団体の教育委員会であるが、教育条件整備を任務とする教育委員会がその障害となることも少なく、上記制度改革はこの障害を取り除くことを目的とするものだった。 ただ、上記制度改革後における首長の教育行政への関与は、当初予想されたほど活発なものではなく、その内容も全国学力・学習状況調査における平均正答率の向上を目的とする施策や評価指標の導入が目立った。また、首長が教科書採択や教育実践に政治的に介入した事例もあったが、全体からすればごく少数の地方自治体にとどまった。 他方、学校統廃合の促進を制度的に担保する条件整備基準は依然として文部科学省が掌握しており、総務省による公共施設再配置計画とあいまって、教育委員会に統廃合計画の策定・実施を迫るメカニズムを構成している。
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