研究課題/領域番号 |
15K04290
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
織田 泰幸 三重大学, 教育学部, 准教授 (40441498)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 専門職の学習共同体 / 校長のリーダーシップ |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は,日本とアメリカにおける「専門職の学習共同体」としての学校の特質および意義と課題を理論的・実証的に明らかにすることである。具体的な到達目標は,①「専門職の学習共同体」に関する代表的論者の議論の特徴について,教育経営の組織論やリーダーシップ論の観点から理論的な位置づけと課題を明確にすること,②「専門職の学習共同体」のルーツとなる基盤的な研究の特徴と意義を明らかにすること,そして③アメリカの「専門職の学習共同体」と日本の「学びの共同体」における参与観察や校長への聞き取り調査をもとに,その学校の特徴や校長のリーダーシップの在り様を日米比較の観点から明らかにすることである。 ①については、アメリカにおける「専門職の学習共同体」の代表的論者である教育政策分析家マクロフリン(Milbrey W. McLaughlin)と教育社会学者タルバート(Joan E. Talbert)の研究に注目して、彼女らの研究から導かれた学校モデル(「教師の学習共同体」)の特徴について,学校改善のプロセス,学校の組織文化(成熟度),そして校長や教員のリーダーシップと関わる観点から整理・検討したうえで,それらの理論的基盤に留意しながら,意義と課題について考察を加えた。 ②については、「専門職の学習共同体」の議論の原点とされるリトルやローゼンホルツの研究と並んで,「専門職の学習共同体」の基盤的研究として高く評価されているマクロフリンの「教授・学習の文脈」に関する研究について概観したうえで,「専門職の学習共同体」の観点から,その意義について若干の考察を加えた。 ③については、スタンフォード大学のブレイザー(David Brazer)教授にPLCについて聞き取りを行い、カリフォルニア州フリーモント学区の副教育長らとともに同学区の複数の学校のPLCチームの観察および若干の聞き取り調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、「専門職の学習共同体」の先駆的研究(マクロフリンとタルバートの研究)と基盤的研究(マクロフリンの教授学習の文脈に関する研究)について理論的に整理・検討するとともに、「専門職の学習共同体」の事例校(カリフォルニア州フリーモントの初等学校1校、中等学校2校)を訪問し、その特徴について基礎的な調査を実施することができた。年度当初に計画していた文献研究の一部が実施できておらず、またわが国における「学びの共同体」としての学校を訪問することはできなかったが、来年度以降の研究で軌道修正をすることが十分に可能であるため、おおむね順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
3年目は,①「専門職の学習共同体」の先駆的研究として、アメリカの教育経営学者リーバーマン(Ann Lieberman)の研究に注目し、その特徴および意義と課題について理論的に整理・検討する,②「専門職の学習共同体」の基盤的研究として、ダーリングハモンド(Linda Darling-Hammond)の学校改革論と専門職的学習論に注目し、その特徴および意義と課題を明らかにする,③「専門職の学習共同体」の事例校(カリフォルニア州およびオンタリオ州)とわが国における「学びの共同体」としての学校(三重県および東海地区の複数の学校)を訪問し、参与観察を行うとともに、校長や教職員に対する聞き取り調査を行い、その特徴について明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由の1つは、学内の入試業務と中国四国教育学会の日程が重なり,学会発表ができなかったこと,2つはアメリカの調査研究において旅費と宿泊費を安価に抑えたことである。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度分の専門書(特に洋書)の購入および出張旅費に充てる予定である。
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