研究課題/領域番号 |
15K04291
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研究機関 | 京都教育大学 |
研究代表者 |
榊原 禎宏 京都教育大学, 教育学部, 教授 (90215616)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 社会的な学校 / 教育修了 / 財政能力 / 施設・設備 / 自主的な学習 |
研究実績の概要 |
3年目は、GMS(「社会的な学校」)の展開とその変化に主眼を置いた。つまり①創設前の理念と②制度の設計は、おおよそ把握できたので、③実際の運営に即して調査を進めた。その結果、以下の点を見出せた。(1)W市とR市の事例校では、次の共通点と相違点が認められる。(2)共通点では、a.学年が上がるほどに、個別学習を基本とした生徒主体の進度とやり方に替わって、入力(Input)の授業が増え、まずは基幹学校の教育修了(Hauptschulabschluss)を念頭に置いたゴール志向の強まりが、校長の発言からも伺える。これは州政府による教育修了試験制度が背景にある。b.新たな教材開発や生徒の問題行動への対応等から、学習を定期的に支援する仕掛けであるコーチングの頻度が下がり、形骸化の面が見られる。同様に、生徒が毎時間の活動を記入、保護者と担当教員の確認を経て、自身の学習の振り返りを促す"Logbuch"等の記録帳の点検、アドバイスも、まま等閑視されがちなことが見られる。c.州レベルの選挙等でのキャンペーンも影響して、GMSへの進学熱は冷め気味でもあり、入学者(新5年生)の確保に管理職は腐心している。(3)相違点では、a.W市では校長の尽力が功を奏したこともあって改築が漸進しており、たとえばアトリエと称する広い空間に、生徒一人ひとりの机と椅子、棚やロッカーが配されているのに対して、R市では、従来の校舎を引き続き使用しているため、自主的な学習をする環境としては不十分である。b.W市では多数の教員の入れ替わりと若い教員の増加によって、校長の描くGMS像への牽引が顕著なのに対して、R市では教員の異動は少ない一方、「みんな疲れている」とも聞こえており、休み時間の校庭監視などの「雑多な」業務を教員が担わざるを得ない加重負担も見られる。各GMSは、各市の財的条件の影響を少なからず受けていると判断できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査フィールドとして複数のGMSの協力が得られ、各校でのGMSの具体を定期的に観察し、校長をはじめ教員ほかスタッフから情報やコメントを得ることができている。理念と制度あるいは、制度と実態とのズレや葛藤についても複数の事実を見出すことができており、学校選択上の保護者や市の行政といった学校外の動向も視野に入っている。最終年度に向けて、事実を整理する枠組みもおおよそ定まり、現時点でのGMS(社会的な学校)の広範な把握と現在の時点での評価が可能な状況にあると判断するため。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度として、これまでの活動と知見に関する報告を行うとともに、ギムナジウム上構段階への進路も視野に入れているGMSの今後を観察するべく、継続的に学校訪問、関連資料の収集を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
書籍ほか、関連資料の購入を予定していたが、予想外にインターネット上で無償で得られる資料が多かったこと、また、他の業務との兼ね合いから海外出張の日程が確保できず、短めの滞在となったため。これらは最終年度に、適正に使用する予定である。
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