本研究の目的は、幼児期の教育と小学校教育における大きな段差の1つに「言葉」があると考え、「話し言葉」中心の幼児教育と「書き言葉」中心の小学校教育を滑らかにつなぐための接続期カリキュラムを「書き言葉」すなわち「文字」とのかかわりに着目して開発することである。そのため、(a)3歳児から小学校1年生までの発達を追跡する縦断研究と、(b)国内外の幼児教育施設の5歳児及び小学校1年生クラスにおける横断研究を実施した。 2019年度は、 (b)に関わって2018年度より2年間O市の幼児期の教育と小学校教育の接続を推進する事業に講師として参画しながら、接続期カリキュラムの完成を目指した。特に事業の協力校であるA小学校に年間7回訪問観察を行い、1年生担任教諭と協議しながらスタートカリキュラムの充実を図った。 その結果、以下の点がスタートカリキュラムにおいて重要であることを明らかにした。小学校入学期の子どもと「文字」のかかわりの特徴は「文字」を学びながら「文字」で学ぶことにある。そのため、幼児期の教育において培ってきた力を引き出しながら、小学校での学習を子どもと共に創っていく姿勢が重要となる。子どもが必要感や意欲をもって学習に向かうことができるように環境や活動を構成・設定することが必要であり、子どもが自身やその生活経験に結びつけながら、思いや考えを出し合い、話し合う(話し言葉)活動や、絵や身体(動作化)を用いた表現の機会を組み込むことが求められる。その上で、小学校の学習として新たな学びや気づきを「上乗せ」する教師の指導が不可欠となる。そのため「価値づけ」「関連づけ」により学びの「自覚化」を促し、学習のめあてに向かって見通しを持ち、学習を進めていくことを可能とする指導が重要である。この結果を踏まえ、2018年度作成のアプローチカリキュラムと合わせ、接続期カリキュラムを作成した。
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