1.(研究目的) 本研究は市町村教育委員会が地方文化の振興を通してまちづくり(地域再生)にどのように寄与しているか、その実態や意義や課題を、事例研究(面接調査)や質問紙調査を行うことにより明らかにすることを目的としている。最終年度は、初年度及び昨年度の事例研究(面接調査)を踏まえ、全国調査(質問紙調査、860人の市町村教育長に配布し、346人の教育長から回収)をもとに、全国的観点から、市町村教育委員会の文化政策の実態と課題等を実証的に分析した。その結果、次のことが明らかとなった。 2.(研究成果)① 伝統文化事業の効果(影響)として、子どもの郷土愛の深まりや自己肯定感の向上、住民の連帯感の高まり、自治体のまちづくりへの貢献、子どもと地域住民の絆の強化などが挙げられる。②伝統文化事業の今後の課題として、伝統文化を推進する人材の確保、予算の確保、教委スタッフ及び教員の伝統文化事業に対する理解の徹底、住民への広報活動の強化、教委と首長部局との連携強化などが挙げられる。③約6割の教育長が文化財の保護行政を行う上で、政治的中立性は重要であると認識している。④約8割の教育長が自治体における文化行政の安定性・継続性は重要であると認識している。 3(研究の意義と課題)本研究を通して、市町村教委の伝統文化行政の展開の実態及び効果(影響)の一端を分析できたことは大きな意義を有する。引き続き、文化行政の阻害要因等について統計的に検討を加える予定である。なお、学校レベルでの分析を行うことが必要であり、今後の課題でもある。
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