「子どもの意識と行動の構造」の可視化とそれに基づく「効果のある指導」の抽出を進めた。特に,研究実践校の小学生(3校),中学生(3校),高校生(4校)の意識と行動の構造を共分散構造分析ソフト(Amos.ver23)を活用して可視化した。さらに,それぞれの学校の子どもの意識と行動の構造に適合した「効果のある指導」を抽出した(指導論)。 また,この「効果のある指導」を組織的に展開するために学校組織マネジメントの理論に基づく「教師の主体的統合モデル」(久我,2013)を援用して,全教職員による組織的省察を行った。具体的には,実践研究校の子どもの意識と行動の構造図を提示し,全教職員による組織的省察を通して,各校の「効果のある指導」を組織的に設定した(組織論)。 これら指導論と組織論の融合モデルである「教育改善プログラム」を構築し,その効果を検証した。結果,子どもの学びにおける主体性と生活における規範意識の向上が一定程度確認された。一方,教職員の協働意識の向上も一定程度確認された。また,小学校においては,保護者の学校認知の肯定的な評価の高まりが確認された。 特に,組織的な勇気づけの言葉掛け(ボイスシャワー)を通して,子どもの「自分への信頼」を高めたことが,学びへの意欲や生活の安定(規範意識の醸成)に効果的に機能することがとらえられた。このことが教職員の指導観を「統制型」から「勇気づけ型」へ転換させ,教育の良質化が進められたことが教職員アンケートから捉えられた。また,教職員の組織化において,組織的省察を通して,自校の子どもが抱える教育課題を共有することにより,協働意識を高めることが確認された。 このように本プログラムの効果性が,子どもの意識と行動の変容と教職員の意識と行動の変容にかかるデータに基づいて,エビデンスベースで一定程度検証された。
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