研究課題/領域番号 |
15K04304
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研究機関 | 福岡教育大学 |
研究代表者 |
船越 美穂 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (80263987)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ドイツ / 保育施設 / 移民 / 参画 |
研究実績の概要 |
平成27年度では、文献資料によって、ドイツの保育施設における子ども達の参画を支える教育理念である「多様性の教育」が、バイエルン州幼児教育計画においてどのように位置づけられているのかを明らかにした。多様性の教育は子どもの権利条約(1989)、サラマンカ宣言(1994)を経て、国連障害者の権利に関する条約(2006)をドイツが批准し(2009)、教育の場にインクルージョン理念が導入されたことによって確立した理念である。ドイツでは移民の背景を持つ子ども達の参画もまた、多様性の教育との関連で捉えられていることから、本研究を進めていくための理論的支柱を明らかにすることができた。 平成27年度は、バイエルン州とシュレースヴィヒ=ホルシュタイン州でフィールドワークを行った。バイエルン州では、複数の保育施設でのフィールドワーク、及び園長へのインタビューを行った。さらに、バイエルン州立乳幼児教育研究所にて、「日本の幼児教育制度」について関係者対象に講演を行うと共に、意見交換を行った。また、ミュンヘン学校スポーツ局の異文化理解教育担当者と意見交換を行った。シュレースヴィヒ=ホルシュタイン州では、研究協力者のクナウアー氏(キール専門大学教授)他と子ども達の参画について意見交換を行うと共に、複数の保育施設でフィールドワーク、及び園長にインタビューを行った。さらに、AWOシュレースヴィヒ=ホルシュタイン幼稚園課を訪問し、関係者にインタビューを行った。2回にわたるフィールドワークで行ったインタビューについては、すでにドイツ語テープ起こしを終えており、現在は日本語翻訳と内容分析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ドイツの保育施設における参画アプローチを根拠づけている思想・理論については、平成27年度では、バイエルン州幼児教育計画における「多様性の教育」について明らかにすることができた。ドイツでは移民の背景を持つ子ども達の参画もまた、多様性の教育との関連で捉えられていることから、本研究を進めていくための理論的支柱を明らかにすることができた。今後は子どもの権利条約以前にまで遡って、歴史的に参画を位置付けることが課題である。 バイエルン州とシュレースヴィヒ=ホルシュタイン州の保育施設において、予定通り2回のフィールドワークを行い、保育実践事例の収集を行うことができた。また、平成27年度は予定していた以上に保育関係者へのインタビューを複数回行うことができた。インタビューはすべてドイツ語で行われ、すでにドイツ語テープ起こしは完成している。平成28年度はインタビュー内容の日本語への翻訳を完成させ、分析を行うことによって、研究成果の発信につなげることが課題である。 本研究で得られた研究成果については、学会発表2回、大学紀要1本にまとめた。さらに、平成27年度教員免許状更新講習「海外の幼児教育の事例から日々の保育を捉え直すワークショップ」において、保育者対象に「ドイツの保育施設における環境」と題して、ドイツの保育施設における参画を促進する実践について講義を行った。このことによって、地域の保育者に対して研究成果の発信を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度にドイツの保育施設で実施したインタビュー内容の日本語への翻訳の完成と保育実践と関連付けながら分析を行うことが課題である。また、平成28年度は、移民の背景を持つ子ども達の保育施設への参画にとって重要である、ドイツ語支援の取り組みの実際について明らかにすることも重要な課題である。 当初予定では、平成29年度実施予定であった保育者対象の研修会への参与観察とインタビューを、平成28年度より開始することによって、インタビューや研修カリキュラムの分析にさらに時間を費やすことによって研究の発展を企図している。 さらに、平成28年度もバイエルン州とシュレースヴィヒ=ホルシュタイン州の保育施設でのフィールドワークを行うことを計画している。フィールドワークでは、移民の背景を持つ子ども達と保育者との関係性や参画場面の実践収集と共に、移民の背景を持つ子ども達の保護者支援・連携についても研究領域としたい。平成28年度では、保護者支援の取り組みに関する資料収集、及び関係者へのインタビューを計画している。 平成27年度と同様、学会発表と紀要において、研究成果を発表すると共に、教員免許状更新講習では「ドイツの幼児教育から子どもの自己決定を考える」というテーマで、保育者対象にドイツの保育施設における子ども達の参画の実際について講習を行うことによって、研究成果を地域の保育者に発信する。さらに、地域の幼稚園や保育所関係者対象の研修の中でも研究成果を発信して、保育の質の向上の一助となるよう努力したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度の研究では、資料をまとめるアルバイト人件費等を要せず、その使用が次年度に移行したことが理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
資料をまとめるアルバイト人件費等で使用する。
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