研究課題/領域番号 |
15K04304
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研究機関 | 福岡教育大学 |
研究代表者 |
船越 美穂 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (80263987)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 移民の背景を持つ子ども達 / ドイツ語学習支援 / 異文化理解 / 保育者研修 / 参画 / 保護者支援 / 教材 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ドイツにおける移民の背景を持つ子ども達が、いかにして保育施設の日常生活に参画することができるのかについて、国及び州レベルでの政策、教育カリキュラム及び保育実践、教材、保育者対象の研修等から検証することを通して、その効果的な支援方法と課題を明らかにすることである。平成28年度の計画では、移民の背景を持つ子ども達に対する支援対策としてドイツ語学習支援の実際を明らかにすること、保育者による援助及び教材の収集が主な課題であった。 平成28年5月~6月にドイツ・バイエルン州の複数の保育施設でフィールドワークを行ない、保育実践事例の収集、関係者へのインタビューを行なった。具体的には、移民の背景を持つ子ども達へのドイツ語学習支援としてバイエルン州で実施している「準備コースドイツ語240」を参与観察し、担当の小学校教員及び研究協力者にインタビューを行った。また、移民の背景を持つ母親達への支援のための取り組みを参与観察し、母親と担当者にインタビューを行った。バイエルン州立乳幼児教育研究所の研究協力者ローレンツ博士、バイエルン州社会省乳幼児教育課の担当者と意見交換とインタビューを行った。さらに子ども達の参画をテーマとした保育者対象の研修会を参与観察して、参加者にアンケート調査を行なった。 平成28年9月にはドイツ・ベルリン市の移民の子ども達の在籍率が極めて高い保育施設でフィールドワークを行い、保育実践事例の収集と、関係者へのインタビューを行った。ベルリン市では、研究協力者であるキール専門大学クナウアー教授と研究に関して意見交換を行った。さらに、ドイツ・ニーダーザクセン州のリューネブルクの保育施設における保育者研修で参与観察を行い、参加者にアンケート調査を行なった。 バイエルン州、及びベルリン市でのフィールドワークにおいて、ドイツ語学習、及び異文化理解に関する教材を収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の研究計画では、移民の背景を持つ子ども達に対する支援対策、保育者による援助及び教材を収集し分析することであった。そのためにドイツの保育施設でフィールドワークを行なって、移民の背景を持つ子ども達の保育場面での参画状況と、保育者による援助等の実践事例を収集し分析を行うこと、特にドイツ語支援の場面観察を行うことが目標であった。当初の計画通り、ドイツの保育施設でのフィールドワークを2回にわたって行うとともに、ドイツ語学習支援の取り組みを観察し、担当者にインタビューを行うことができた。また、ドイツ語学習、及び異文化理解に関連する教材の収集をも行うことができた。さらに、平成29年度の計画であるドイツの保育者対象の研修会にも2回にわたって参与観察することができ、アンケート調査も実施することができた。また、研究遂行の中で、重要なテーマであることが明らかとなった、移民の背景を持つ母親への支援の実際を参与観察し、母親と担当者にインタビューを行うことができた。 本研究で得られた研究成果については、学会発表1回、大学紀要1本にまとめた。さらに、平成28年度教員免許状更新講習「ドイツの幼児教育から子どもの自己決定を考える」において、保育者対象にドイツの保育施設における子ども達の参画について講義を行い、受講生がワークショップを通じて、日々の保育実践を振り返り改善していく機会を提供した。このことによって、地域の保育者に対して研究成果の発信を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度、及び28年度にバイエルン州で実施したインタビュー内容の日本語への翻訳はほぼ完了した。しかし、シュレースヴィヒ=ホルシュタイン州とベルリン市でのインタビュー内容の日本語翻訳はまだ完了していない。今後の課題は全てのインタビュー内容の翻訳の完成によって、内容分析を行う状況を早期に作ることである。当初予定では平成29年度実施予定であった保育者対象の研修会への参与観察とインタビューが、すでに平成28年度で完了させることができた。このことによって、インタビュー内容の分析にさらに時間を費やすことが可能となり、今後の研究の推進に有利に働くと考える。 平成29年度も、バイエルン州とシュレースヴィヒ=ホルシュタイン州でのフィールドワークを計画している。フィールドワークでは、最新の移民の背景を持つ子ども達の保育の状況、保護者への支援等の実際を把握するとともに、関係者にインタビューを行うことによって、移民の背景を持つ子ども達の参画の課題について明らかにすることを計画している。 平成28年度と同様、学会発表と紀要において、研究成果を発表すると共に、教員免許状更新講習では「ドイツの幼児教育から子ども達の参画を考える」というテーマで、保育者対象にドイツの保育施設における子ども達の参画の実際と、その中での移民の背景を持つ子ども達への支援の実際について講義を行うことによって、研究成果を地域の保育者に発信する。さらに、地域の幼稚園や保育所関係者対象の研修の中でも研究成果を発信して、保育の質の向上の一助となるよう努力したい。3年間の研究で得られた研究成果については、報告書としてまとめることによって、日本の保育施設における外国人乳幼児の参画、及び支援に貢献することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度の研究遂行の中で、ドイツの他の州における保育実践事例を収集することが課題となり、そのためのフィールドワークを次年度に行うことが時期的に最適であると判断したことが理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年4月のドイツ・チューリンゲン州におけるフィールドワークの際の旅費として使用した。
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