本研究の目的はドイツの移民の背景を持つ子ども達の保育施設における参画について、国及び州レベルでの政策、教育カリキュラム及び保育実践、教材、保育者対象の研修等から検証することを通して、その効果的な支援方法と課題を明らかにすることである。研究期間全体を通じて、主としてバイエルン州及びシュレースヴィヒ=ホルシュタイン州の保育施設でフィールドワークを行なって、移民の背景を持つ子ども達の参画に関する支援や実践を収集するとともに、関係者にインタビューを行った。研究の中で、ドイツでは移民の背景を持つ子ども達の参画が多様性を尊重する教育(インクルーシヴ教育)によって支えられていること、及び保育施設における子ども達の参画は国連子どもの権利条約、ドイツの社会保障法典、及び州の幼児教育に関する法律の中で規定されていることを明らかにした。また、バイエルン州のドイツ語支援の必要な就学前の子ども達対象の「準備コースドイツ語240」を調査して、その学力保障と社会参画に果たす役割と意義について明らかにした。さらにドイツにおける子ども達の参画をテーマとする保育者研修に参加して、そのプログラムの特徴を明らかにすると共に、アンケート調査を実施して、参加者の意識を明らかにした。 研究期間最終年度の研究成果は、2018年4月から5月にバイエルン州の保育施設でフィールドワークを行い、保育者、母親、さらに子ども達に参画に関してインタビューを行ったことである。この研究成果については今後学会発表や紀要等で発信する予定である。また、日本保育学会では、子ども達の参画にとって重要な役割を果たす家庭から保育施設へのスムーズな移行のための慣らし保育と多言語絵本についてその意義を明らかにした。また紀要において、バイエルン州における移民政策と言語教育の関連性、言語観察シートの特徴、及び今後の日本の幼児教育の課題について明らかにした。
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