本研究は、高校教育カリキュラムと生徒の進路選択との関わりについて、後期中等教育における複線制の可能性という視点から考察し日本における高校教育の在り方を検討することを目的としていた。具体的な研究内容として、①複線制(パスウェイ)を構成する理論的概念の検討については、文献研究を中心にある程度の成果を得た。②具体的にどんな選択肢があるのか、また中等教育以後の教育機会および職業へどう接続するのかについては、中心的なフィールドであるカナダ・アルバータ州における調査によって明らかとなった。③進路選択に影響を及ぼす高校カリキュラムについても、フィールド調査から明らかとなった。④のパスウェイ選択に関わる統計的分析については、データ収集が不十分なため、十分な成果を上げることはできなかった。さらに、本研究の計画段階において、カナダ・アルバータ州以外の地域においても同様の研究を行うとしていたが、十分な調査日程を確保することができなかったことと、現地における研究受け入れ体制が得られなかったことにより、成果を上げることができなかった。一方では、研究範囲をアルバータ州カルガリー市に限定することで、カルガリー市教育委員会、カルガリー市の協力を得て、市内の多様な特徴を持つ高等学校を訪問し、生徒および管理職への聞き取り調査を通じて、パスウェイが生徒の進路選択にどのような効果をもたらしているのかに関する知見を得ることができた。また、高校のカリキュラム構成に深く関わる民間企業や職能組合などへの聞き取り調査を行い、中等教育と職業社会がどのように接続するのかに関するデータを入手することができた。以上の点から、当初の計画に比較して、その範囲は狭まったものの、カナダ・アルバータ州の事例研究から日本の高校教育の在り方を考える上での手がかりをえることができたと考える。
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