近年、大学改革とりわけ大学のガバナンス改革が進む中で、学長のリーダーシップの確立が求められる一方で、これを支える職員の役割や教育・研究に関する専門職としての教員も、教職協働の観点から、教授会という場とは異なる局面で大学経営への参画が必要である。このような問題意識から、これまで蓄積してきた教員や職員の実態や課題と照合することによって、ガバナンス改革の時代にふさわしい大学経営人材のあり方およびその養成方策を明らかにすることに努めた。その結果、以下のような点が明らかになった。 第一に、大学経営人材としての考察の範囲を、事務職員に留まらず教員出身者や外部人材として学外から登用された者にまで拡大し、過去に調査した結果も踏まえつつ、考察をしたところ、大学経営において、専門的かつ総合判断に優れた人材へのニーズが高まっていること、また職員・教員および外部人材は、それぞれの能力の特性を活かしつつ、実質的な協働を行う必要があることが分かった。 第二に、教職協働の実態と方向性を明らかにした。教職協働を有効ならしめるには、単なる役割分担ではなく、教員・職員・外部人材の三者が目標を共有し、実質的な共同作業によって経営に当たる必要があるが、調査・研究の結果、そこことの正しさを明らかにした。 第三に、とくに教員出身の大学経営人材の養成方策を検討した。米国の大学には、教員出身のアドミニストレーターが多数存在し、彼らの少なからぬ部分は教育・研究ではなく大学経営に専念し、専門的な大学経営人材に育つ者である。一方、わが国では教員を配置しても一時的な職務と観念されがちであり、彼らのキャリアパスとして大学経営人材が認識されている例はまれである。このため、米国やその他の国における実態とわが国の現実を対比させることによって、改善のための具体策を提案した。
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