研究課題/領域番号 |
15K04321
|
研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
坂口 緑 明治学院大学, 社会学部, 教授 (10339575)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 生涯学習実践 / デンマーク / 通学制国民高等学校 / NPO |
研究実績の概要 |
2015年度は、デンマークの生涯学習実践に関し、若者の自立支援をどのように行っているかを明らかにするために、デンマークの各「市(kommune)」レベルの実践において、EU・国家・市の政策がどのように関係しているのかという点について調査を進めた。文献研究と調査研究の概要は次のとおりである。文献研究のとして、デンマークの社会教育に関心をもつ4名の比較教育学、政治教育学の研究者と国内にて「デンマーク教育研究会」を発足させ、2015年度は3回の会合をもった。代表者もこの会合で報告を行い、有力なコメントをもらった。また調査研究として、2016年2月にはデンマークコペンハーゲン市校外ハスレウ市の通学制国民高等学校1カ所と、コペンハーゲン市ノアブロ地区にあるNPOによる移民支援団体1カ所を訪問し、予備調査を行った。本調査は次回となるが、質問項目作成のための仮説、コンタクトをとるべき人物の紹介を受けるなど、今後の本調査に向けた準備ができた。2015年度はおもに文献調査にもとづく研究成果として、論文2本(「ソーシャル系大学とは何か──市民大学の系譜から見る「シブヤ大学」」『社会教育』2015年5月号44-52頁、「OECD『国際成人力調査』の概要と日本の成人力」『日本生涯教育学会年報』第36号2015年11月141-150頁)を発表し、学会発表1件(「新しい市民大学の系譜と類型」日本生涯教育学会第36回大会(2015年11月8日))を行うことができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2016年2月の予備調査で判明したのは、2つの点だった。ひとつは、デンマークの通学制国民高等学校の機能が相対的に低下し、昨日についての疑問がもたれているという点がわかった点である。コペンハーゲン市近郊で移民のため成人教育の拠点とされるHerslev市にある通学制高等学校は、事実上規模の縮小が検討されていることが判明した。また、2015年に活発化した中東からヨーロッパへの移民の移動により、既存の市や国による生涯学習政策の不十分さが目立ち、実際に若者支援の機能を担っているのがNPO等の諸団体に移行していることも確認できた。予備調査を実施することにより、文献からだけではわからないアップツーデートな情報を得ることができ、今後の調査の軌道修正をはかることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
2016年度は、2016年8月に予定している本調査に向けて、通学制国民高等学校への訪問調査を基軸としながらも、移民支援をおこなうNPOでの若者に対する学習支援の情報を収集することを計画に加える。さらに、2017年3月にコペンハーゲン市で開催される「第45回北欧教育研究学会大会(45th Congress of the Nera)」での報告も計画する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
校務のため予備調査の期間を短縮せざるをえず、そのため訪問する調査先も2カ所と限られた。そのため、予備調査以外の資料収集等の時間がなく、そのための予算を使うことができなかった。
|
次年度使用額の使用計画 |
2016年度は、当初予定していた調査地デンマークへの渡航を1回ではなく、2回とする。1回目についても予定している本調査のために渡航期間を1週間予定し、週末を入れるなど、資料収集の時間を確保する。訪問先では研究協力者の助力を得ながら、本調査を実施する。また2回目として2017年3月にコペンハーゲン市で開催される学会への参加を検討している。報告の申請受付が2016年9月以降となり、報告が受理されるかは未定だが、受理された場合は今回の調査結果の途中報告を学会にて行うことができると考える。
|