ヨーロッパ欧州連合を中心とする生涯学習政策の仕組みを理解するために、1973年からの加盟国で北欧の小国デンマークの事例を調査対象とし、聞き取り調査を行った。デンマークにおけるボランタリーセクターの役割に関して、文献調査に基づく歴史的および思想的考察、そして聞き取り調査を用いた社会学的考察を行い、その結果、次の点がわかった。第一に、政治学の領域で論じられている「福祉国家の再編」問題がデンマークにおいても教育と雇用を結びつける生涯学習政策によって対応されてきた点、第二に、その際、フォーマルな教育機関、ノンフォーマルな教育機関、そしてNGOでの成人教育プログラムにおいて対応している点、第三に、そのすべてのプログラムにおいて、デンマークにおけるデモクラシー思想が重視されており、それが社会的統合(social integration)の観点から追求されている点である。 デンマークへの渡航は期間中4回実施し、2016年2月にはNGOと通学制国民高等学校への訪問、2016年8月には通学制国民高等学校、2017年3月にはNERAでの学会報告が実現した。2017年8月にも通学制国民高等学校への訪問調査が実現できた。また2017年12月にはデンマークの国民高等学校の現在的状況にかかわるシンポジウムを実現し研究成果を研究者および実践家、一般の人とともに共有することができた。 今後は生涯学習実践を、政策的側面と思想的側面の両方から考察し、とりわけ社会的統合に関わるヨーロッパの事例から日本社会への応用可能性を検討したい。
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