研究課題/領域番号 |
15K04323
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
木岡 一明 名城大学, 大学・学校づくり研究科, 教授 (10186182)
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研究分担者 |
雲尾 周 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (30282974)
加藤 崇英 茨城大学, 教育学研究科, 准教授 (30344782)
臼井 智美 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (30389811)
織田 泰幸 三重大学, 教育学部, 准教授 (40441498)
川口 有美子 公立鳥取環境大学, 環境学部, 准教授 (40616900)
末松 裕基 東京学芸大学, 教育学部, 講師 (10451692)
照屋 翔大 茨城大学, 教育学研究科, 准教授 (90595737)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 教育マネジメント・システム / 組織開発 / リーダーシップ / チーム学校 / 他職種構成 / 新しい職 / 地域諸団体とのネットワーク / 国際比較 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、6月、10月、3月に全体での研究打ち合わせ会を実施し、各研究分担者からの研究進捗報告をもとに、研究課題の解明に取り組んだ。本研究は大きく、国内調査、国外調査、理論研究からなるが、それぞれの研究成果は次のとおりである。 国内調査:昨年度に引き続き、高知県、愛知県、新潟県、鳥取県における調査を実施した。高知県及び愛知県での成果は日本教育経営学会(平成28年6月)で、新潟県と鳥取県での成果は日本教育行政学会(平成28年10月)で報告した。前者については、多様な勤務条件下で教育専門性を基準とした非常勤職員が雇用されている県がある一方で、専門性に関わらず人員確保のために民間人を臨時雇用している県があり、いずれも配置の効果を認めているものの、時間的な調整に苦慮していることなどが明らかになった。また後者については、専門スタッフの課題として、学校側の受け入れ格差の問題、資質や力量を維持・向上させるための教委の支援、特に研修や日常的なサポートはが不可欠であることが明らかになった。加えて今年度は新たに、三重県を事例に、外国人児童生徒教育における多職種による職務分担の実態調査も実施した。 国外調査:平成29年2月にドイツを訪問し、教員(ティーチングスタッフ)並びに学校経営職(校長、副校長)と、スクールカウンセラー、ソーシャルワーカー、社会福祉士との恊働の実態調査と関連する資料の収集を行った。特筆すべきは、従来の教員と他の専門職との分業ではなく、教育職ながら「カウンセリング教員」と呼ばれる新たな役割・職位が構築され、教育課題の複雑化・困難化(例えば、特別な支援を要する子どもや外国にルーツを持つ子ども増加など)に対応すべく配置されていることが明らかになったことである。 理論研究:国内外の「チームとしての学校」に関連する文献を収集し、今後の理論的研究の可能性を念頭に置いて整理・検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、①国内調査事例について引き続き調査を実施し、その成果を基に、学校に配置されている多様な職について、その職種別の職務遂行パターンの析出を試みること、②海外事例についてサポートスタッフをはじめとする多様な学校職員の勤務実態、あるいはそのバリエーションについてインタビュー調査を実施すること、③海外の理論的動向を引き続き把握することの主に3点を目標として掲げていた。これまでの成果は、上述のように2度にわたって全国学会で発表を行ってきたが、具体的には次のような進捗状況にある。 ①については、継続して4県(高知県、愛知県、新潟県、鳥取県)での配置および活用状況について、学校内での協働実態はもちろん行政当局も視野に含めながら調査できた。さらに、三重県での外国人児童生徒への対応という現代的な教育課題に焦点化した実践事例についても新たに検討することができた。都道府県の状況に応じて、多様な配置や活用の状況にあることが次第に明らかとなり、それらを前提とした教育マネジメントモデルを構想する基礎情報は順調に収集・分析が進んでいる。 ②については当初、イギリスへの渡航を想定していたが、すでに課題解明に相応の情報を把握できていたという進捗が確認されたため、同じヨーロッパ圏において異なる特徴を有するドイツに渡航先を変更し、調査を実施した。その結果、「カウンセリング教員」と呼ばれる特徴的な職員の配置を確認することができた。また多職種の配置が、教員の負担や多忙の問題とも関連づいている状況が存在するなど、今後日本との比較検討を進めていくうえでの重要な示唆を得ることができた。 ③については、洋文献を中心に、一般経営学における「チーム」の考え方を析出し、組織論的な検討を進めることができた。今後、「チーム学校」に関する組織論的考察を進める上での、基本的かつ重要な理論的観点の把握に努めているところである。
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今後の研究の推進方策 |
年2回(10月と3月)の研究会および日本教育行政学会での研究成果発表に向けて、研究分担者それぞれが、文献調査、インタビュー調査を継続して実施する。また、研究会の他に、日本教育経営学会時(6月)など、メンバーが顔をそろえる機会を活用して、研究の進捗状況の共有を密に行う。なお、平成29年度の主たる研究課題は次のとおりである。 国内調査:これまで調査を実施してきた事例に継続的にかかわり、特に臨時的雇用等非常勤職員との調整に視点を置きながら、学校内での協働の実態の把握に努めるとともに、事例間の比較検討から職務遂行パターンの析出とその精緻化を試みる。 国外調査:アメリカ合衆国コロラド州を訪問(平成29年9月予定)し、同州の「特別な教育サービスを提供する職員(specialized service professionals)」を対象にした職務評価システムと、彼らを活用した学校組織づくりについて、教育行政当局(州教育局、学区教育委員会事務局)と個別学校それぞれにおいてインタビュー調査を関連資料の収集を行う。 理論研究: 「『チームとしての学校』に関する組織論的考察」というテーマにて、これまでの成果をまとめ、公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまでの研究から、各都道府県において様々な配置実態があることが明らかとなった。またこれまでの成果として、労働条件や雇用類型にも目を向ける必要があることが明らかになった。以上の結果、国内調査の対象事例を増やす必要が生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
国内調査の対象事例を増やし、より多くの事例分析に活用する。その広がった検討対象の分析結果から、本課題が目標とする教育マネジメントモデルの精緻化につなげていく。また、労働条件や雇用類型に関連する図書や資料の購入、収集に活用し、研究課題の解明に資するよう効果的に使用する。
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