研究課題/領域番号 |
15K04326
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
広瀬 義徳 関西大学, 文学部, 准教授 (90352822)
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研究分担者 |
棚田 洋平 一般社団法人部落解放・人権研究所(調査・研究部), 企画・研究部, 研究員 (00639966)
金 侖貞 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 准教授 (40464557)
榎井 縁 大阪大学, 人間科学研究科, 招へい研究員 (50710232)
権 瞳 阪南大学, 国際コミュニケーション学部, 教授 (70288992)
中島 智子 プール学院大学, 国際文化学部, 名誉教授 (80227793)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 外国籍教員 / グローバル化 / 在日外国人 / 多文化教育 / 国籍法 / 市民権 / 教員任用 / 教育行政 |
研究実績の概要 |
2015年度は、第一に大阪、東京、鳥取で外国籍教員及びその支援者(団体)への計5件の聞き取り調査を実施した。鳥取の調査では鳥取県教育委員会の外国籍教員任用の方式が大阪と同様であるとの証言が得られたため、それによって鳥取県教育委員会への訪問聞き取り調査の必要性が出てきた。また、これまでほとんど手つかずであった東北地方で外国籍教員の任用実績のある教育委員会として、岩手県の訪問聞き取り調査を実施した。その結果、全国で特別支援学校に着任している複数の外国籍教員にもそれぞれ異なる経緯や事情のあることが見えてきた。東京では、東京都非常勤講師組合の元執行役員からの情報で、はじめて外国籍教員任用における国籍条項が撤廃された経緯や事情が一定解明できた点は大きな成果であった。また大阪では、1991年文部省通知に至る経過の解明として、民団側で重要な役割を担った人物から詳細な聞き取りができたのも大きな成果であった。 第二に、サーベイモンキー等を活用した諸外国の外国籍教員任用に関するアンケート調査の準備として調査票の検討と作成を行った。 それと並行する作業として、第三に、諸外国の外国籍教員任用に関する情報収集と先行研究の検討から、各国で異なる教員制度、国籍制度、公務員制度などの基本的な確認を行い、上記の調査票作成時に参考とした。 第四に、国内主要新聞社(朝日、毎日、読売、産経)のデータベース及び民団新聞・統一日報などのバックナンバーから、外国籍教員及び1991年日韓法的地位協定に関連する記事の検索とその中の重要記事について内容確認を行い、それぞれ関連記事ファイルを作成し、研究上の基礎資料とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題の進捗状況は概ね良好である。ただ、当初の想定より研究分担金の執行が抑制的であったため、その分は次年度に繰り越した。研究費のより効率的な執行に向け、定例の研究会で細かな執行計画を立て共有することした。課題の中で、1991年文部省通知に関して、日本政府及び韓国政府側の資料収集や関係当事者への聞き取り調査ができていない点だけが懸案事項である。韓国政府側の資料の把握は、韓国の研究者に協力依頼する予定である。 諸外国における外国籍教員の任用に関するアンケート調査がどの程度の回収率となるか、またその内容がどの程度実態把握に貢献するデータかについては予測不可能な面があるため、まずは実態解明につながる情報探索的な調査として位置付けた上で、2016年度春から実施することとする。
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今後の研究の推進方策 |
2016年度は、第一に、諸外国における外国籍教員の任用に関するアンケート調査の実施とその結果の集計・分析が、中心的に取り組む研究課題となる。アンケート・データの収集が良好であれば、秋以降に開催される関連学会大会においてその集計結果と分析を発表する予定であるが現時点では不確定である。また収集されたデータに基づいて海外現地調査の候補を選定する。第二に、国内で外国籍教員の任用がはじまった1973年前後の動向を解明する課題として、昨年度の東京に次いで、改めて大阪府・大阪市教育委員会や川崎ふれあい館への調査等を実施する。加えて、その他の採用実績のある自治体や外国籍教員の任用をめぐって動きのあった自治体の聞き取り調査を継続して実施するのと、関連する地方議会議事録・教育委員会会議録の資料収集も進める。第三に、昨年度収集した国内主要新聞紙における外国籍教員関連記事を多角的に分析する。第四に、外国籍教員個人への聞き取りについては、関西・東京以外、そして韓国・朝鮮籍以外の現職外国籍教員に焦点をあてて調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2015年度の使用額が当初予定より少なかった主な理由としては、聞き取り調査に伴う謝礼金等の人件費・謝金を予算計上していたものが、聞き取り調査協力者が公的機関であったこと、また対象者が個人の場合にも、専門的知識の提供ではなくモニター協力の執行枠で、図書カードのみの謝礼に収まった点が挙げられる。またデータの収集が始まって間もないため、資料整理のアルバイトを雇う人件費も抑制された点が挙げられる。
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次年度使用額の使用計画 |
2016年度は、前年度繰越金13万4,438円を含む103万4,438円の予算のうち、データ収集の進捗状況に応じて、人件費・謝礼金のうちアルバイト人件費の執行が10万円前後増える可能性がある。他方、謝礼金については引き続きモニター協力の執行枠で対応する分については費用が抑制されるため、調査の旅費あるいはアルバイト人件費などの支出に充当する計画である。なお、2016年度の後半に計画している専門的知識の提供の依頼に対しては、所定の支出額を予定している。
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