研究課題/領域番号 |
15K04329
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
佐藤 仁 福岡大学, 人文学部, 准教授 (30432701)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 教員養成 / 教員採用 / アメリカ |
研究実績の概要 |
平成28年度は、文献や資料の分析を中心に、教員養成と教員採用の関係性を探った。その中で、教員養成において行われるパフォーマンス評価(edTPA)に着目し、その制度的概要と運用の実態を検討した。 制度的概要については、パフォーマンス評価と対峙して論じられる付加価値評価の仕組みと比較することで、その特徴をより明確にすることができた。すなわち、学校現場でどう動くのかというプロセスの評価が可能となること、それぞれの文脈での評価が可能となる点である。一方で、パフォーマンス評価の結果が教員免許取得と関わることによって、多様なプロセスを見るはずの評価が画一的な評価に転化する可能性も指摘した。以上の点については、学会大会で報告するとともに、学内の紀要論文としてまとめ、成果を公表している。 運用の実態については、本研究課題とは別に米国ミネソタ大学を訪問する機会を得ることができたため、当該研究課題の遂行と並行して、edTPAの具体的な運用に関するインタビューを行うことができた。ミネソタ州では、パフォーマンス評価が教員養成機関の認定と関わっているが、個人の免許取得には関わっていない。これにより、教員養成機関ごとに独自の展開が可能となっている。ミネソタ大学では、edTPAの作成について、オリエンテーションを学生と教職員に実施し、その方法論だけではなく、そもそものコンセプトを共有するようにしている。何のためにポートフォリオを作成するのか、それが専門職の学びとしてどのような意味を有するのか、そういった基盤的理念を共有することで、取り組み自体の意義を明示させていることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、教員養成と教員採用の両システムがそれぞれに与える影響を検討するものである。今年度は、edTPAに着目して、教員養成の仕組みが教員採用に与える影響を考察してきた。採用レベルでedTPAの活用が、それほど進んでいない状況はあるが、教員養成での学びのプロセスが採用段階においても確認されるということは、昨年度の研究からも明らかにしている。少なくとも教員養成が及ぼす影響の一端を明らかにしていることから、研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、都市部の学区における教員採用の状況を調査する予定である。すでに、郊外部の学区については、調査を行っていることから、両者の比較が可能となる。また、調査においては、近隣の教員養成機関への調査も並行して行うことにより、教員養成と教員採用の相互関係を検討することができる。これらの実態的調査を丹念に行っていくことが、今後の研究の方策となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、現地調査を予定せず、文献資料の分析を中心に行う予定であった。そのため、資料費等に予算を計上していた。ただし、他の研究活動の一環として米国に訪問する機会を得ることができ、その際に本研究課題に関わる内容について、専門家から話を伺うことができた。結果として、現地の実態に関する情報を入手することができ、文献資料費にかかる予算を支出する額が減り、次年度へと繰り越すことになった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、再度、米国現地調査を実施する予定である。その際に、次年度使用額として、現地調査の充実、具体的には訪問する組織の追加を行うことで、分析対象のケースを増やしたいと考えている。ケースを複数盛り込むことで、より一般的な動向を確認することができる。
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