研究最終年度にあたる本年度は、これまでの研究成果を整理するとともに、フォローアップのフィールド調査を行った。研究成果の整理としては、教員養成と採用の関係性について、採用制度の実態という観点と、教員レジデンシープログラムの観点の二つを設定し、整理した。前者については、これまでにインタビュー調査を行った学区(ベリンハム学区とニューアーク学区)の事例を取り上げ、教員の需要状況によって、養成との関係性も異なる点を明らかにした。この点は、研究当初の仮説的枠組みを証明する成果であった。教員レジデンシープログラムについては、教員採用を包含した養成プログラムという特質から、学区のニーズに合った教員を養成段階から確保できる利点がある点を明らかにした。これらの成果は、日本教師教育学会で発表するとともに、論文にまとめた。 フォローアップのフィールド調査としては、教員レジデンシープログラムのさらなる実態を解明すべく、ニューヨーク大学へ訪問し、関係者へのインタビューを行った。また、カリフォルニア州立大学チコ校が実施する郊外地域でのレジデンシープログラムの実態についても、プログラム責任者に対してインタビュー調査を行った。二つの調査より、教員レジデンシープログラムの内実は、それぞれの置かれている文脈で多様に展開されていることが明らかになった。ニューヨーク大学の場合は、通信教育という手段を効果的に活用したり、学校現場と学生をつなぐ役割を担う職員を配置することで、手厚いサポート体制を整備していた。チコ校の場合は、連邦政府の補助金を活用しながら、既存の修士課程のプログラムとの融合を図りながら、展開する事例であった。このように、教員レジデンシープログラムは、それぞれの文脈によって内実が大きく異なるため、一般論として論じることの限界が明らかになった。
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